医療安全管理体制の整備~指針は最初の安全報告である

病院の外観
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医療安全のための活動を個人だけでなく組織として取り組んでいくためには、まず医療安全体制をしっかりと整備していくことが大切です。

医療安全体制の整備は、医療安全文化の醸成のためには決して欠かすことのできないものです。個人から組織、体制から文化へと昇華させていくためには、組織としてどのような指針をもって臨むのかが問われるのです。

この記事では、医療安全管理の基本的な考え方、安全管理体制を整備するたに必要な要素を解説していきます。

医療安全管理体制の整備

医療安全管理を個人としての取り組みだけでなく、組織として取り組む必要がある理由から解説します。

医療を取り巻く環境は日々専門化しており高度化しています。個人として行うことができる単純な業務やシステムだけでなく、複数の人間が関与した非常に複雑化されたシステムです。

そのため医療における安全対策も、複雑化されたシステムに対応するためには、個々人の努力だけでは対応しきれないものになっています。

医療安全を実現していくためには、まず組織としての管理体制を整備して、機能性のある取り組みをしていく必要があるのです。

以下は医療法施行規則において義務付けられている医療安全管理体制の整備に関する概要になります。

医療法における医療安全管理体制の義務を説明した図

①医療に係る安全管理のための指針を整備する

②医療に係る安全管理のための委員会を開催する

③医療に係る安全管理のための職員研修を実施する

④当該病院における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策を講ずる

⑤特定機能病院や臨床研修病院においては、医療機関内に安全管理を行う医療安全管理者の配置を行うこと

(特定機能病院は専任の医療安全管理者の配置をすること)

厚生労働省医療安全対策法令・通知等

これら医療安全管理体制の整備に必要とされる各概要を以下で解説します。

医療安全教育~アクティブラーニングによる効果的な学習プログラム

2018.02.23
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医療安全管理指針

医療安全管理指針は組織における最初の安全報告である

医療安全管理指針は義務づけられている

医療安全管理指針の整備は医療法第2条の第3章「医療の安全の確保」で有床・無床を問わず義務づけられています。

医療安全管理指針を整備する場合は、基本事項をベースにして作成します。基本事項は以下のようになります。

医療安全管理指針の事項を説明した図

 

医療安全管理体制を整備する上で、最も基本となるのは医療安全管理指針です。組織内における全ての安全活動は、この医療安全管理指針に結びついている活動なのです。

安全管理指針は大空に浮かぶ凧のようなものです。組織の皆から見えるものであり、凧からも皆が見えるものでなければなりません。また、凧はすべて糸で繋がっており、制御しているのは組織の成員一人一人、つまり「あなた」です。

部署の違いや職種の違いにかかわらず、組織内における全ての活動が安全管理指針に直結しているのです。

医療安全管理指針の概要図

安全管理指針は組織における基本理念を明文化したものであり、組織のどの部署からも、どの役割を担っている人からも最短距離で直接的なものである必要があります。

そのためには、適切な指針を策定し、それを全職員に周知し共有することが重要になります。また、1度決定した指針であっても、あまりにも現場の実態から乖離したものである場合には随時改訂する必要もあります。

医療安全管理の組織体制の整備と委員会の開催

医療安全管理体制は基本的に下図のようになっています。

医療安全管理体制の組織図

それぞれのセクションにリスクマネージャー(RM)を配置して、その背景には多くのチームあるいはスタッフが存在します。

医療安全管理体制は病院によって様々な形があります。また、それぞれの委員会や管理室、医療安全推進員の呼称も違います。病院によっては、より細分化した委員会やグループを形成している場合もあります。

そのため、所属する施設において、どのようなグループがあり、どのような名称になっているかを職員全体で把握して共有する必要があります。

医療安全管理委員会の開催は前述した医療法施行規則において義務付けられています。そのため月1~2度、委員会を開催している病院が多いと思います。また、診療報酬の医療安全対策加算の施設基準にも、委員会の開催が基準の一つになっています。

医療安全管理の研修の実施と方策

医療安全に係る研修を実施することも医療法施行規則によって義務付けられています。

医療安全を組織的に推進していくためには、組織の成員一人一人の能力向上と学習する姿勢が不可欠です。組織の管理者側は最大限その取り組みを支援し、リソースを振り向けていかなければなりません。

また、医療安全における研修は組織全体あるいはセクションごとや職種ごとにも行うべきです。いずれにしても学習する文化を組織の中で構築し、研修を義務的なものでなく有意義なものにしていく必要があります。

報告システム

医療安全において重要な要素となるのは「報告に立脚した文化」を醸成することです。組織における状況や状態を把握するには、現場からのフィードバックが不可欠なものになります。

そのため、医療安全に関するすべての情報を機能的に把握していくためには、報告システムを整備する必要があります。

報告はインシデントやアクシデント報告が基本となりますが、発生した事象の影響度レベルによって報告先や報告する必要がある時間も違ってきます。そのため、あらかじめ有害事象が発生した場合、「誰が」「誰に」「いつ」「どのように」報告するのかを明確にしておく必要があるのです。

下図は報告すべき事象が発生した場合における、報告システムの一例になります。

医療安全管理体制における報告システムの説明図

 

報告システムはインシデントやアクシデントなどの有害事象が発生した時のみならず、平時から医療従事者や全職員が連絡・報告だけでなく「相談する」場や機会があるかを確認しておくことも大切です。

「職員が疑問や懸念を相談する仕組みはあるか?」「組織に受けとめる機能はあるか?」を考慮して報告システムを構築することをオススメします。

インシデント管理システム~報告によるフィードバックとレスポンス

2018.02.06

事故対応

前述した報告システムを構築する場合には、事故対応に関する取り決めをしておくことも大切になります。

発生した有害事象によっては、初動の遅れが重大事故に発展する恐れもあるため、あらかじめ発生した影響度レベルによって報告から事故対応までを決めておく必要があるのです。

事故対応の取り決めをする際に重要なのは、事故発生時に迅速な対応ができるように「時間」「報告先」「報告を受けてからの対応」になります。

もし仮に事故の影響度を見誤れば、時間的な対応も遅れてしまい、それによって処置できるものも出来なくなくなってしまいます。

そのため、「疑わしきは必ず報告する」ということを徹底して全職員に周知していく必要があります。

インシデントレポートの目的は再発防止のため

2017.05.26

医療安全管理者の配置

厚生労働省は医療安全管理者について以下のように定義しています。

医療安全管理者とは、各医療機関の管理者から安全管理のために必要な権限の委譲と、人材、予算およびインフラなど必要な資源を付与されて、管理者の指示に基づいて、その業務を行う者とする。

厚生労働省 医療安全管理者の業務指針および養成のための研修【PDF】

医療安全管理者の配置は医療法施行規則において義務付けられています。また、医療安全管理者の配置は、診療報酬の医療安全対策加算の要件になっています。

医療安全管理者には主に以下の役割があります。

①医療安全管理体制の構築

②医療安全に関する職員への教育や研修の実施

③医療事故を防止するための情報収集、分析、対策立案、フィードバック、評価

④医療事故への対応

⑤安全文化の醸成

つまり医療安全管理者の役割は、この記事において解説してきた内容と同様です。医療安全管理体制を整備するために必要な要素すべてにおいて、重要な役割を担っています。

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2018.01.08

まとめ

医療安全管理体制の整備は、医療の安全を実現していくためには不可欠なものです。組織としてどのような体制で安全に取り組んでいくかは、全職員に大きな影響を与えます。

安全文化を醸成していくためには体制の整備だけに満足せず、全職員と共に組織文化を共創するという発想が重要になります。

そのため、医療安全の管理体制を整備した上で、いかにその内容を全職員に周知し共有していくかが問われるのです。

医療安全の実現のためには、医療の安全は職員一人一人なのだということを忘れてはなりません。

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