
「新人看護師は辞めやすい」というイメージがある一方で、かつてはその離職率は看護職全体平均よりも低い水準で推移していました。しかし、ここ数年でその状況には変化が起きています。
入職1年目の早い段階で「辞めたい」と悩むのは、今も昔も変わらない通過儀礼のようなものです。なぜ新人は辞めたくなるのか、最新のデータと現代特有の背景から分析・解説します。
目次
1. 最新データ:新人看護師の離職率は「10%台」へ上昇
かつて7%台で推移していた新人看護師の離職率ですが、最新の調査では明らかに上昇傾向にあります。
新卒看護師の離職率の推移(最新動向)
日本看護協会の調査によると、長らく7%台で横ばいだった新卒看護師の離職率は、2022年度(2023年発表)のデータで10.3%へと急増しました。
2010年代半ば: 7.5% ~ 7.8% 前後で推移
2020年度(コロナ禍初期): 8%台へ微増
2022年度(最新): 10.3%
常勤看護師全体の離職率(約11.8%)に迫る勢いであり、「新卒の10人に1人が1年以内に辞めている」というのが現在のリアルな実態です。

なぜ急増したのか?
これには、近年のコロナ禍による看護学生時代の実習不足が大きく影響していると考えられています。臨地実習で患者さんと十分に触れ合えないまま入職し、現場の忙しさと重責に直面することで、これまで以上に大きなギャップを感じている世代と言えます。
2. 病院規模と離職率の関係:小規模病院ほど高い傾向
病院の規模と離職率の相関関係は、依然として明確です。病床数が少ない小規模な病院ほど、新人看護師の離職率は高くなる傾向にあります。

【病床規模別の新卒離職率(目安)】
99床以下: もっとも離職率が高く、平均を大きく上回る傾向(15%前後となるケースも)
300床以上: 規模が大きくなるにつれ離職率は下がる(7〜8%台)
500床以上: 教育体制が整っていることが多く、比較的低い水準で安定
小規模病院では、教育担当者が専任でない場合や、同期が少なく相談相手がいないといった環境要因が、離職率の高さに繋がっていると考えられます。
3. 辞めたくなる最大の理由:「現代版」リアリティ・ショック
新人がぶつかる最大の壁は「リアリティ・ショック(理想と現実の衝撃的なギャップ)」です。近年は、この内容も少し変化しています。

「実習でできなかった」という焦り
前述の通り、近年の新人は学生時代に十分な実習を行えていないケースが多くあります。「国試は受かったけれど、技術に全く自信がない」「患者さんに触れるのが怖い」という不安を抱えたまま現場に出るため、先輩とのスキル差に愕然とし、「自分は看護師に向いていない」と早々に結論づけてしまう傾向があります。
ミスへの過度な恐怖心
医療安全への意識が高まる一方で、真面目な新人ほど「インシデント=罪」と捉えがちです。 「一度の失敗」を「人格の否定」のように受け止めてしまい、そこから立ち直れずに退職を選択してしまうケースも少なくありません。 しかし、失敗せずに一人前になった看護師はいません。 組織にとって重要なのは「誰がミスしたか」ではなく、「どうすれば再発を防げるか(システムの問題)」です。
4. 指導の受け止め方を変える:「叱責」ではなく「投資」
新人時代は、覚えることの多さと業務のスピード感に圧倒される毎日です。先輩からの厳しい指導に、涙する日もあるでしょう。ここで大切なのは「心の持ちよう(マインドセット)」の転換です。
「怒られた」と「教えられた」の違い

先輩の言葉を「怒られた(感情的な攻撃)」と受け取るか、「教えられた(プロとしての指導)」と受け取るかで、成長速度は変わります。
もちろん、理不尽なハラスメントは許容すべきではありません。しかし、患者さんの命を守るための厳しさであれば、それは「あなたに成長してほしいという期待(投資)」でもあります。
Before: 「先輩に怒られた。もうダメだ、嫌われている」
After: 「この手順は危険だと教えてくれた。次はどうすれば防げるか確認しよう」
「向いていない」と悩めること自体が才能
多くの新人が「自分は向いていない」と悩みます。しかし、本当に向いていない人は、自分の適性を疑ったり、患者さんへの影響を心配して悩んだりしません。 「向いていないのではないか」と悩むこと自体が、あなたが責任感を持って看護に向き合っている証拠なのです。
まとめ
離職率の現状: 新人離職率は近年上昇し、約10.3%に。実習不足などの影響で、かつてよりハードルが高くなっている。
環境要因: 小規模病院ほど離職率は高い傾向。教育体制の有無が大きく影響する。
リアリティ・ショック: 「理想」と「現実」のギャップに加え、「実習不足による技術不安」が現代の特徴。
マインドセット: 失敗は「個人の欠陥」ではなく「学習の機会」。悩むこと自体が、看護師としての資質がある証拠。
今の新人看護師は、難しい時代を乗り越えてきた世代です。現状の厳しさをデータとして理解しつつ、「完璧でなくて当たり前」と自分を許しながら、少しずつ前に進む姿勢が大切です。











