医療安全管理者とは~配置と役割を解説します

対話をする看護師
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医療安全管理者は医療機関内における安全管理の責任を担う重要な役割です。この記事では医療安全管理者とは何か、その定義と目的を解説すると共に、配置の必要性と役割について簡潔に解説していきます。

医療安全管理者とは~定義と目的について

厚生労働省は医療機関における医療安全管理者の位置づけについて以下のように定義しています。

医療安全管理者とは、各医療機関の管理者から安全管理のために必要な権限の委譲と、人材、予算およびインフラなど必要な資源を付与されて、管理者の指示に基づいて、その業務を行う者とする。

【PDF】厚生労働省 医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針

医療安全管理者は施設管理者から医療機関内における安全管理の権限を委譲されて、その権限に基づいて組織の安全活動体制の構築と運営を一任された責任者です。

医療安全活動は施設管理者(主に院長)に直轄する活動であり、組織全体で体制を構築すべき活動でもあります。

医療安全管理者は上記の内容を踏まえた上で、組織における安全管理体制を構築して機能させていく役割を担っています。また、組織における安全文化の醸成を促進し、医療機関内に安全文化を根づかせていくことも大切です。

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医療安全管理者の配置

診療報酬制度において医療安全対策加算に関する施設基準には、医療安全管理者の配置が要件の一つとなっています。

医療安全管理者の配置を説明する図

医療安全対策加算に係る適切な研修を終了した専任の看護師、薬剤師などが医療安全管理者として配置されていること

2006(平成18)年度の診療報酬改定において、入院基本料における医療安全対策の推進が評価されました。その施設基準として、医療安全管理者の配置が基準の一つとなったのです。

その後2010(平成20)年度の改定では感染防止対策、医薬品安全管理体制整備にも加算が認められました。

また、医療安全管理者の配置は、診療報酬における加算だけでなく、組織の安全管理体制の構築に欠かせないものとなります。

以下に医療安全管理者の主な役割を解説していきます。

医療安全管理者の役割

医療安全管理者の役割には以下のものがあります。

 

医療安全管理者の役割を解説した図

 

医療安全管理体制を構築する

医療安全を組織的に進めていくためには医療安全管理体制の構築が不可欠です。医療安全管理者は、安全管理体制の構築と整備のため、そして組織において推進していくための運営を行います。

医療安全管理における指針の整備、委員会や推進室の設置、事故対応時のマニュアルの整備など、その役割は多岐にわたります。

医療安全管理者は施設の管理者と協力・連携しながら、組織において安全活動が円滑に進めていけるように努める必要があります。

医療安全に関する職員への教育や研修を実施する

医療安全管理において職員への教育は極めて重要なものになります。

医療安全管理者は、組織内の部門・職種を超えて横断的に教育の機会を活性化させる必要があります。教育の方法として主なものに研修の企画と実施があります。また、研修実施後の評価と改善、関係各所への報告等をします。

医療安全管理の「管理」とは、学習や教育を通じて行われるものです。そのため、医療安全管理者は、職員の教育機会として様々な教育プログラムの企画と実施、評価を行っていくことが大切です。

事故防止のために情報収集と分析、対策立案をする

医療安全に関する情報の収集と分析、そして対策を立案するのも医療安全管理者の大きな役割の一つです。

組織内において発生したインシデントやアクシデントの報告システムを構築し、情報の収集を行います。また、収集した情報を分析し、再発防止(あるいは未然防止)のために対策を立案します。

患者相談窓口によせられた患者や家族からの相談や苦情などの情報も収集する必要があります。情報を収集するだけに留まらず、分析し必要があれば迅速に対応する必要もあります。

また、院内における情報だけでなく、各種専門機関から発信されている情報を収集することも重要になります。

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フィードバックと評価をする

安全に関する情報の収集と分析、対策を立案して実施した場合には、関係各部署や管理者ならびにステークホルダーに対してフィードバックすることも大切な役割となります。

また、対策を実施した場合には、その対策の有効性を追跡し評価することが必要です。そして、それらの評価の結果として有効性が認められなければ再び分析と対策の立案をするなどの改善策を検討し実施することも重要になります。

医療事故に対応する

医療安全管理者は事故が発生する前に、事故発生時の対応をあらかじめ検討しておく必要があります。

事故発生時の報告先や緊急時の対応、時間外での事故発生への対応など、あらかじめマニュアル化し、職員に周知・教育しておかなければなりません。

また、事故発生時の報告体制を構築し、関連部署へ連絡と周知は欠かせません。

医療安全文化を醸成させる

医療安全管理者は組織において医療安全文化を醸成させるよう努める必要があります。

安全に関連する情報の収集や職員の安全意識の向上は、組織における文化の影響を強く反映されるものです。そのため、安全文化の醸成は、安全管理の中でも基盤となる重要な要素です。

医療安全管理者には、医療の安全を職員に働きかけ、安全活動への参加を促し、そのために必要なリソースを提供することが求められます。

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まとめ

医療安全管理者は組織における安全の責任者です。そのため役割は多岐にわたり、医療安全に関連する業務に広く係っていくことになります。

また、組織の中を横断的に担う役割であるため、様々な部署や職種とも協力し連携していくことが求められます。そして医療安全管理者は、施設の管理者や各部署のリスクマネージャーと協力しながら、医療の安全を管理していく必要があるのです。

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