システムズアプローチとは~その意味と手順を事例で解説

Systems approachと書かれた画像
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システムとは交互に作用しあう要素の複合体である

ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ

システムズアプローチとは~意味と概念について

システムズアプローチとは、問題の対象をシステムと捉えて、その問題に対してシステム的な方策によって解決する手法のことです。

より簡単に説明すると、部分ではなく全体を、要素だけでなくその繋がりや関係性を重視した問題解決手法ということです。そしてシステムズアプローチは以下の6つのポイントを重視します。

システムズアプローチの意味と特徴を解説した図

01要素の複雑な集合

要素の複雑な集合とは、1つのシステムにおいて存在する様々な要素(人、機器、設備、気温など)が、複雑に影響し合う集まりのことです。

端的にいえば「部分が形成する全体」です。

02全体の機能と目的

全体の機能と目的とは、「01要素の複雑な集合」で説明した「全体」そのものが有する機能とその目的への着目です。

端的にいえば「全体としての振る舞い」です。

03入出力の関係と機能

入出力の関係と機能とは、「02全体の機能と目的」がどのような入出力によって振舞っているかの関係と機能への着目です。

端的にいえば、「全体としての振る舞いの動態性」です。

04集合内の階層と関係

集合内の階層と関係とは、「全体」の中にどのような階層性があり、それらはどのように関係しているのかへの着目です。

端的にいうと、「全体の断面図」です。

05集合と環境の相互作用

集合と環境の相互作用とは、「全体」と定義した境界の外側にある環境とどのように作用し合っているかへの着目です。

端的にいうと、「全体と環境の関係性と反応」です。

06組織化された複雑システム

最後に組織化された複雑システムとは、そのシステムがどのように組織として機能し、複雑さを有しているのかへの着目です。

端的にいうと、「それは何だ?」「どうなってるんだ?」ということです。

 

このシステムズアプローチが着目する6つの項目は、すべてを端的にいうと「部分と全体」、「機能と振る舞い」、「入力と出力」「階層と関係」「集合と環境」など各々の中間にある「と」への着目です。

それを踏まえた上で、次にシステムズアプローチの手順と流れを解説していきます。

氷山の側面図

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システムズアプローチの手順と流れ

システムズアプローチの全体像と手順を、可能な限りシンプルにすると以下の図のようになります。

システムズアプローチの手順と流れを解説した図

そもそもシステムズアプローチの手法を適用するのは、何か解決したい問題や改善したい事柄がある場合が多いと思います。そうであるなら「現実」と「目標(理想)」にギャップがあるはずです。そして、そのギャップを埋めるためにシステム的なアプローチをするわけです。

そのためには、まず問題(課題)が何であるか明確にしなければなりません。また、明確になった問題が、システムズアプローチで解決あるいは改善すべき問題として設定されます。

そしてその問題をどのように解決するのか具体的な対策案や方法論を決定して実行に移します。

そこで出た一つの結果を評価し、目標とのギャップが埋まっていれば問題の解決となります。一方で結果的に問題が解決されていないようであれば、また問題の再設定を要することになります。

これら一連の流れがシステムズアプローチの最も端的な手順であり、問題が解決するまで繰り返しこのサイクルを回すことになるのです。

それでは次に具体的な実践事例をつかってシステムズアプローチの解説をしていきます。

システムズアプローチの事例~「病院の待ち時間を改善する」

病院において「待ち時間」の不満やクレームが高まっている状況を改善するために、どのような改善をするのかという事例をつかって解説していきます。

システムズアプローチではない実践事例

以下の図で解説するアプローチは、最もシステム的でなない改善策です。

システムズアプローチの概念が無い場合の事例を解説した図

来院者の対応をする受付業務の改善をして、待ち時間の改善を行った場合の一例です。

この図の例では、確かに受付業務の改善によって受付の待ち時間を改善することはできます。しかし、もし全体を1つのシステムとしてみるアプローチに欠けているとしたら、その改善は受付という部分の最適化に終わります。そして、混雑や待ち時間が受付から次の工程に「移動」するだけです。

図の例でいえば、診察前の中待合に混雑が「移動」するだけであり、結果的に来院者が待ち時間に対して不満を抱く結果は改善されません。

このパターンでは、全体の病院システムを部分(要素)でしか考慮できていない上に、その要素間の繋がりも希薄であり、大きな意味での機能性を有していません。そのため、結果的に問題の解決や改善に至っておらず、目的を達しているとはいえません。

ただ、ここで注意が必要なのは、受付の改善そのものは悪いことではない点です。しかし、そのための努力や労力が全体として価値的な結果を生んでいない典型的な形だということです。

それでは次にシステムズアプローチによる改善の事例を解説します。

システムズアプローチによる実践事例

以下の図はシステムズアプローチによる待ち時間の改善事例です。

システムズアプローチの事例を解説した図

まず、このパターンで着目したいのは、すべての要素が直接あるいは間接的に繋がっており、相互に作用し合っている点です。

このパターンでは部分の最適化ではなく全体を考慮した最適化を可能にしています。病院のシステムでは、様々な要素が存在します。病院の職員、来院する患者、病院の各部署、設備、などなど。

これらの要素の特性と繋がりを考慮して、全体としての最適化をすることがシステム的な物の見方です。例えば病院における待ち時間に関する不満の理由を来院者にアンケートをとると、必ず上位を独占するのが「あとどれくらい待てばよいかわからない」という不透明さへの不満です。

このような1つ1つの要素における特性を、全体として考慮するためには、各部署間での連携とフィードバックが重要になってきます。全体の状況を把握できていれば、待ち時間の表示、予約システムを活用して予約を受け付けるのか否かの判断、調整が可能となります。

そして全体をシステムと捉えることによって、結果としても待ち時間の改善という目標を達成できるのです。

システムとは要素間の繋がりと関係性、その集合が相互に作用して振舞う全体の機能性です。システムズアプローチは、全体の機能性を1つのシステムとして捉えながら、目標の達成や改善の実現を可能にする有効な手法なのです。

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