医療安全教育~アクティブラーニングによる効果的な学習プログラム

握手している手のイラスト
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学べば学ぶほど、自分が何も知らなかった事に気づく、

気づけば気づくほどまた学びたくなる。

アルバート・アインシュタイン

医療安全教育とは

医療安全教育とは、医療の安全を実現するために、継続して学習していく過程のことです。

医療安全にゴールはありません。「これでもう安全だ」と言い切れるものでもありません。状況は刻々と変化しており、そのような状況に対して適切な対応をとるには、継続的な学習と教育が不可欠なのです。

この記事では、医療安全教育と継続的な学習を行うための要点・具体的な進め方について解説します。

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医療安全教育の内容と項目~6つの基本的な教育

以下の図は医療安全教育の基本的な6つの項目です。

医療安全教育の学習項目を解説した図

効果的なコミュニケーション

医療安全の根幹となるのは、医療者間あるいは医療者と患者(と家族)の間におけるコミュニケーションです。特に医療をチームで提供する場合には、適切で効果的なコミュニケーションは欠かすことができない要素です。

そのため医療安全教育では、業務の中でいかに効果的なコミュニケーションをとるべきかを教育しなければなりません。コミュニケーションについてはノンテクニカルスキルチームステップスを学習すると効果的です。

インシデントの発見・予防・管理

医療安全を推進するためにインシデント管理は絶対に欠かせないものです。インシデントは医療事故に繋がる恐れのあった出来事であり、それ自体は決して好ましいことではありません。

しかし一方で、インシデントは多くの学習機会を提供してくれる側面もあります。過去に発生したインシデントの事例から学ぶことで、インシデントの発見・予防・管理に対するリテラシーを育むことも可能になります。

エビデンスと情報の活用

エビデンスと情報の活用とは、根拠に基づく学習と様々な情報を学習に活かしていくということです。前述したように、過去のインシデントから学ぶことも、過去の事例から得られる情報の活用になります。また、その際にどういった対応・対策をとり、どのような効果があったのか、といった根拠のある学習が大切になります。

また、科学的な根拠のない分析や単なる精神論ではなく、「なぜそうすべきなのか」といった原因と結果に基づいた教育を推進することも重要です。そのため、医療者間での情報交換と共有、知識の伝達、などチームとして情報をどう取り扱うかの意識づけも行いましょう。

安全な業務の遂行

安全な業務の遂行は、まさに現場の肌感覚で学んでいく部類の学習となります。安全な業務が大切なことは、誰にでも理解はできます。しかし、実際に業務を行う中で、いかに安全に配慮しながら業務を遂行していくかといった実践は、実務を通じて学んでいくものです。

実務の中での教育・学習をする場合にはOJTによる現場教育が基本となります。

倫理的な行動

倫理的な行動を教育することは、不安全行動の抑止に直結します。

医療事故の多くは、不安全行動や不安全状況の誤認によって発生します。倫理的な行動を学ぶことは、不適切な近道行動や省略行動、あるいはマニュアルの不遵守やミスの隠蔽などを防止します。

そのため倫理的な行動の教育は、技術的な教育や分析手法などの学習よりも基本的な学びとなります。

継続的な学習

医療安全教育の目的は、医療安全文化の醸成と定着にあります。

間断なく続くリスクやハザードに対して有効な安全活動を行うには、継続的な学習は必要不可欠になります。そのため医療安全教育では、継続的な学習の重要性を根づかせると共に、その機会を持続的に設けることが重要になります。

医療安全教育の方法~現場教育のOJTとOff-JT

医療安全教育は主に2つの方法で行っていきます。その2つとは以下の図で示す「OJT」と「Off-JT」になります。

医療安全教育のOJTとOff-JTの活用を解説した図

OJTとは実務の中で行う教育であり、Off-JTとは現場を離れて行う教育(研修や講義など)のことです。これら2つの教育方法は、いわば車の両輪のようなものであり、バランスよく組み合わせながら適切な教育プログラムを設計することが大切です。その中に成長があり、その成長こそが医療安全教育の成果につながるのです。

医療安全の教育は、基本的に現場によって行われるべきものです。実際に事故が発生しうる現場で学ぶことこそが生きた教育になります。そして、そのための補完的な役割を担うのがOff-JTです。

これら2つの教育は、次の項で解説するアクティブラーニングの概念を念頭に入れて、適切な配分とタイミングが求められます。そのとき何を学ぶべきであり、何を教育すべきかを検討することは、教育を設計する管理者の重要な役割です。

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医療安全の学習~アクティブラーニング・秩序と混沌の境界

アクティブラーニングとは、学習者が主体となって能動的に参加する学習法のことです。

以下の図は、アクティブラーニングの概念を可視化したものです。そして各学習方法の学習定着率を示しています。

医療安全教育のアクティブラーニングを解説した図

この図でいえば外側にいくほど、より現場教育に近づいていきます。前述したOJTも外側の領域になります。一方で内側にいくほどOff-JTになっていきます。アクティブラーニングとなるのは原則的に「グループ討論(ディスカッション)」からといえます。つまり学習者が主体的かつ能動的に参加できる領域です。

また学習定着率とは、学んだ事柄を知識や技能へと昇華して、現場の業務で活用できることをいいます。アクティブラーニングの考え方では、より現場教育に近づくほど学習の効果と定着率が上がっていくと捉えます。

ただ注意が必要なのは、定着率が必ずしも高くないという理由で講義や読書等が不要なわけではない点です。

現場での学びも、基礎的な前提知識や学習が大切であり、自ら業務を実践するにも他の人に教えるにしても、基礎的な理解があって可能になります。そのため、OJTとOff-JTのバランスは非常に重要なわけです。

医療安全教育を推進するためには、アクティブラーニングにおける「学習者主体」の概念を取り入れながら、学習者が積極的に学ぶことができる教育プログラムを設計することが大切です。

また、学習とはいわば「秩序」と「混沌」の境界にあるものです。上の図でいえば講義などの座学は秩序を学ぶ場として有効ですし、一方で現場教育は「混沌」とした業務の中で身体で覚えていくという側面もあります。

重要なのは、学習者を「秩序」と「混沌」の境界線上におき、その両面からより深く広い学びを獲得できるサポートをすることなのです。これがアクティブラーニングやOJTとOff-JTの組み合わせの真骨頂です。

医療安全教育の学習支援~学習する組織の後方支援

医療安全教育は学習者が主体となって行うべき教育です。そのため組織は、学習者を積極的に支援しバックアップすることが重要になります。

主体とは最前線です。「組織」が最前線に立つのではなく、後方から主体者たる学習者を支援しサポートしていかなければなりません。以下の図はその概念を可視化したものです。

医療安全教育の学習支援を解説した図

学びにはリソースが必要です。それには「時間の確保」「学習ツール」「人的支援」など様々なものがあります。

組織の管理者はこれら必要なリソースを提供すると共に、安全に対するコスト意識を持つことも重要になります。教育は投資の側面があるものです。一夜にして安全は実現されません。そのため、組織の全面的なバックアップがあってこそ、学習者は積極的に学ぶことができるのです。

また、学習を義務として捉えさせるのではなく、どうしたら能動的に学習に参加してもらえるかを常に勘案し実行していかなければなりません。

医療安全とは能動的な取り組みです。その取り組みを管理する源泉は「学習を通じた管理」であり、学習者たる現場スタッフの積極的なコミットメントが重要なのです。

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