【看護管理】看護のコンピテンシー~評価と育成は表裏一体

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コンピテンシーとは成果につながる行動特性のことです。この概念が人事評価や人材育成において注目される理由は、適切な評価をすることが能力開発あるいは人材育成に大きな効果があるためです。

とりわけ看護師のような専門職は、求められる能力も専門的なものとなります。それだけに、一般的な業種や職種で取り入れられている評価基準では、対応しきれない場合もあるでしょう。

この記事では、コンピテンシーとは何か、どのように評価や育成に活用していくべきかを解説していきます。

看護とコンピテンシー~評価すべきことの明確化

まずコンピテンシーを論じる前に、明確にしておかなければならないことがあります。

それは「評価とは一体なんなのか?」ということについてです。

この問いが明確ではない場合、人事評価はまず間違いなく形骸化します。

なぜなら、目的が明確ではない場合、本来は目的を達成するための手段であるものが目的化するためです。つまり、目的と手段が入れ替わってしまうのです。

「評価」のための評価では、一体なんのために行うのかわからなくなってしまいます。

そのため、評価や人材育成においてコンピテンシーの概念を導入する場合は、その目的を明確にしておくことが重要になります。

では、そもそも評価とはなんなのか?

それは価値を測るということです。価値を計ると言い換えてもいいかもしれません。もしくは価値を量るでもいいでしょう。

いずれせよ、評価とは価値を評するということです。

コンピテンシーとは、つまり価値を評するという場合における「価値」のことです。そしてその価値とは、その職務において成果となる行動特性です。

コンピテンシー(行動特性) = 価値

看護師のコンピテンシー評価の概念図

価値を理解できなければ、「一体なにを評するのか?」ということになってしまいます。そういった意味では、価値(コンピテンシー)を理解するということは評価するための必要条件であるということです。

コンピテンシーを評価、育成、教育などに活用する目的は、評価すべきことを評価し、目指す方向性を明示し、目標をもたせ、その方向性に沿った育成・教育を行うということです。

そして最大の目的は、安全で質の高いサービスを提供することにあるのです。とりわけ医療は、安全と質を高いレベルで求められる専門性の高い業態です。それは同時に、コンピテンシーを活用することによる効果が大きいということでもあります。

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コンピテンシー評価を看護に活かすには

コンピテンシーは客観的な評価指標となると同時に、日々の行動指針にもなりますつまり非常に実務的な効果があるということです。

看護のコンピテンシーを説明した図

管理者側にとっての「評価」は、スタッフにとっては「目標」という概念になります。それによって評価と目標がリンクし、組織的な機能性をもつに至るのです。

現場に落とし込むことができない評価をしていても、スタッフの立場では目標にしえないものです。だからこそコンピテンシーは、いかに実務的なものかを問われるのです。

現場管理者に求められること

組織とは花瓶のようなものです。そして、その花瓶の形に合わせて臨機応変に変化する水があって、はじめて活けられた花は咲きます。

どのような項目を評価し、どのような目標に組織を向かわせるのか、それを決定し管理するのが管理者の役割です。だからこそコンピテンシーを評価するということは、同時に人材育成とスタッフの能力開発に直結するのです。

曖昧な評価は曖昧な目標を生む

コンピテンシーを可能な限り正確に捉えられなければ、評価基準も曖昧なものになってしまいます。それによって、現場のスタッフにとっても目標をもつことが曖昧なものになってしまうのです。

そのため、コンピテンシーはできる限り明確なものでなければなりません。前述したように、管理者側からみた評価という概念は、スタッフにとって目標という概念に変わります。

だからこそ、コンピテンシーを正確に把握できるように、モデルとなるスタッフとの徹底した対話を通して行動特性を明確に引き出していく必要があるのです。

看護師の人材評価と人材育成に欠かせないコンピテンシー

組織とは学ぶ組織としてだけでなく、教える組織でなければならない

ピーター・F・ドラッカー

コンピテンシー評価の要点は、優れた成果をあげているスタッフの行動特性を把握して、それを組織全体で共有することにあります。それによって、組織全体のパフォーマンスを向上させ、医療の質・安全の向上を実現しうるのです。

組織あるいはチームを管理するということは、本質的に学習を通じてされるものです。つまり、優れた管理には必ず学習する文化が根づいているものです。

以下の図は学習の5段階を示しています。

看護のコンピテンシー評価を人材育成・教育に活用する方法を説明した図

ここで重要なことは、「知らない」「知っている」「理解している」という段階を超えて、いかに実践していくかにあります。

そしてその過程を通じて、成果につながる行動特性、つまりコンピテンシーを共有することによって結実していくのです。

もしも共有されない行動特性であれば、それはコンピテンシーではなくアビリティです。アビリティとは個人特有の技術や知識などの能力のことです。

医療は個々人が成果をあげればよいというものではありません。組織やチームで協力することで成果をあげていく必要があります。そのため、コンピテンシーを評価モデルとして人事評価や人材育成に活用するということは、端的にいうと共有するということなのです。

評価と育成は表裏一体のものであり、決して別々に切り離せないものです。コンピテンシーを評価モデルとして活用するということは、教授し合う文化を創りあげていくということなのです。

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まとめ

コンピテンシー評価モデルを活用する際に忘れてはならないのは「人を評価するのもまた人」だということです。そのため行動特性の奥底には、人間特性があるという事実を知る必要があります。

組織という器に制度という水を注ぐことによって、人財は花咲くのです。

これはとても根気のいる作業です。ときには器を洗い、水を替え、それでも思ったように花が育つとは限りません。しかし、人材を育成すること、教育することというのは、それをするだけの価値があるのです。

つまり、人材マネジメントとは「人を知る」ことなのです。

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【参考】厚生労働省「経験能力評価基準」のご案内 

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