目次
TQMとは何か?その意味と目的について
TQM~総合的品質管理の手法
TQMとはTOTAL QUALITY MANAGEMENTの頭文字をとった略で総合的品質管理のことです。
TQMの目的は部分的な品質の向上を目指すのではなく、全社的あるいは全部門的に品質の向上を目指すものです。さらに重要なことは、どのような品質を向上するのかということです。
TQMにおけるTOTALとは、全社的あるいは全部門的な品質の向上という意味とともに、もう一つ重要な意味があります。それは、品質向上のための取り組みに制約を設けないという点です。質が問われる業務における全ての事柄が対象となるということです。
つまりTQMの目的は全社的あるいは全部門的な質的向上を目指すと同時に、組織におけるあらゆる業務を総合的に向上させることにあるのです。
また、それらの取り組みを管理することをTQMといいます。一般的には総合的品質管理という言葉はあまり用いず、TQMと呼ぶことが多くなっています。
TQMとTQCとの違い
TQMと類似した経営手法に「TQC」があります。TQMが総合的品質管理であるのに対して、TQCは全社的品質管理と呼ばれるものです。
一般的にTQMもTQCも全社的あるいは全部門的に行う品質管理手法です。ただしTQMは全社的に品質管理を行うという意味合いだけでなく、対象となる管理対象は「品質」の向上に限定されません。
例えば医療や介護などの人的なサービスの場合、何か製品を製造して品質向上を狙いとするわけではありません。つまり管理すべき対象が「品質」とは限らないということです。そのため、TQMにおける「品質」とは提供されるサービスの質や業務を実施する上での質を総合的に向上させるという意味合いもあるわけです。
TQCは主に製造業などにおいて品質向上を目的として行う経営手法であるのに対して、TQMは医療や介護などの人的なサービスを提供する分野における「質」の向上を目指すものであるといえます。
ただしTQMとTQCは区別なく使われていることも多く、境界も曖昧な部分があるため注意が必要です。
TQM活動
QCサークルとQC活動
TQMの管理手法の母体となっている考え方は「QC」にあります。QCとは「Quality Control」の略で「品質管理」のことです。主に製造業の分野における品質の維持・向上を目的とした取り組みであり、前述したTQCのベースもQCにあります。
QCは基本的に当該業務を行う現場や部門単位で行う取り組みです。これをQC活動といいます。TQCもTQMも全社的・全部門的に行うといっても、日常業務を実際に管理するのは各現場での取り組みとなります。そのため、TQMの取り組みも基本は現場における活動となります。
しかし、ここで注意が必要なのは、QC活動とは各現場における品質向上であり、あくまでも全体からみると部分的な取り組みである点です。組織において品質の向上を目指す場合には、部分的な品質向上だけでは実現できないことも多々あります。
また、一つの現場における品質向上への取り組みが全体としては望ましくない結果を生み出すこともあります。そのため、QC活動を行う場合には全社的ならびに総合的な視点から、まさしく「トータル」に組織全体における品質の向上を検討する必要があるわけです。
組織とは各現場や各部門が繫がり合って構成されているものです。そういった組織の繫がりを考慮しながら、各部門においても品質の向上に取り組む必要があります。そしてその各現場・各部門での構成や取り組みをQCサークルといいます。
TQM活動とは、「全体と部分」「部分と全体」のバランスを考えながら行う総合的な品質管理手法であり、単なるQCに留まらない全体的な取り組みでもあるのです。
TQMのやり方と進め方
TQMの手法と手順
TQMの活動は何よりもテーマの選定が重要になります。テーマとは質の改善をしようとする事柄のことであり、TQMを実施する目的でもあるのです。そのため、テーマの選定は極めて重要なものであり、TQM活動の成否を左右するものでもあります。
- テーマの選定
- 現状の把握
- 目標の設定
- 現状の分析
- 対策立案と実施
- 評価と標準化
以下に具体的なTQM活動の手順を解説していきます。
テーマの選定
前述したようにテーマの選定はTQM活動における重要な出発点となります。当該テーマとなる対象については、多角的な視点で十分な検討をした上で決定しましょう。
仮に選定したテーマが質の向上につながらなかったり、曖昧な目的のまま選定したものであった場合、TQM活動を実施する意味がありません。そのため、「何のために」という目的を明確にして、妥当性と実現可能性のあるテーマを選定することが重要です。
現状の把握
テーマの選定をした場合は、そのテーマを選定した理由があるはずです。
また、その目的によって達成したいことがあるのであり、その目的にはTQMを実施することによって現状よりも質の向上ができることでもあるはずです。つまりTQMを実施する目的は、改善したい「現状」があるのであり、その現状の質を向上させたいはずなのです。
そのため、「今」どのような状況なのかを、この段階で明確に把握する必要があるわけです。
また、ここで現状を把握することは次に行う目標設定の土台となるものであり、TQM活動の成果を評価する基準点ともなります。さらに、現状を把握することは問題点や改善点を明確にする作業でもあり、それ自体が非常に有益なTQM活動であるともいえます。
目標の設定
目標の設定はTQM活動において、どのような目標を達成したいのかを決定することです。TQM活動によって現状をどのように改善したいのか。選定したテーマにおいて、どのような状態にしたいのかを設定していきます。
目標の設定は、その目標が本当に実現が可能なものであるか十分に検討することが大切になります。あまりにも理想を追求し過ぎて達成が困難な目標を設定した場合、TQM活動を行うスタッフのモチベーションの維持ができなくなったり、目標を達成する具体的な対策が難しくなってしまいます。
そのため目標の設定をする場合にはテーマの選定と同様に、その目標の妥当性と実現可能性を十分に考慮する必要があります。また、目標をできる限り具体的なものにして、対策実施後の評価を定量的にも定性的にも行えることが望ましいです。
現状の分析
最初に現状の把握をしたのにもかかわらず、なぜ現状の分析を改めて行う必要があるかというと、目標の設定によって現状の見え方が変わるためです。
目標とはいわば「理想」と言い換えることもできます。TQMとは業務の質を向上させるために現状と理想とのギャップを埋めるための取り組みと言っても過言ではありません。
そのため、目標を設定した上で改めて現状を分析することによって、「現状の把握」では発見できなかった問題点や課題が見えてくることもあります。また、現状の分析を行うことによって、TQM活動の具体的な対策立案と実施プランに役立てることも可能になります。
対策立案と実施
TQM活動の対象となるテーマにおける現状と目標のギャップを埋めるための具体的な対策を立案します。
対策の立案と実施は、まさにTQM活動そのものであり、業務の質を向上させる唯一の行動機会であるともいえます。そのため対策を立案して実施する際には、関係するスタッフ全員に対策の内容をしっかりと伝えて共有することが重要になります。
TQMの本質は「トータル」という部分にあります。つまりスタッフ全員の積極的な関与と同じ目的に向かう協働でもあるのです。TQMによって質の向上を実現するのは「TQMという手法」ではなく、現場のスタッフ一人一人です。
そのため、対策の立案内容と実施における具体的な行動プランは、もれなくスタッフ全員に伝達し共有するように努めましょう。もしもこの伝達と共有を怠れば、それは最早TQMではありません。
評価と標準化
対策の実施後にはTQM活動によって、どのような成果があったのかを評価する必要があります。
評価における基準はテーマや目標によっても様々ですが、設定した目標を達成できたのか否かを定量的あるいは定性的に判断していきます。もし仮に目標の設定が曖昧な場合、この評価の段階で困惑することになるでしょう。なぜなら、どのように評価してよいのか曖昧にならざるを得ないからです。
評価基準は可能な限り目標の設定時に明確にしておくことで、対策実施後の評価もしやすくなります。
そして評価によって目標を達成できたと判断できる場合には、当該TQM活動を日常業務のスタンダードとして標準化させていくことも重要になります。TQM活動とはいわばテストの側面もあり、その取り組みの有益性が認められた場合には、さらに総合的に組織に浸透させていくことが大切になるのです。
TQMのPDCAサイクル
TQMに終わりはありません。一度カイゼンができたからといってゴールというわけでもありません。組織を取り巻く環境は内的にも外的にも刻々と変化しており、極めて流動的なものです。
そのため、TQMを静的なものと捉えず、常に動的なものと捉えることが重要になります。また、下図のようにPDCAサイクルを回し、決して止めるべきではないでしょう。
TQMは組織における経営課題や業務上の諸問題、そしてスタッフ一人一人の絶え間ない質向上の取り組みです。
常に「何のために」行うのかを明確にしながら、質の向上を実現するのは手法ではなく「人」であることを忘れないことが大切です。