【医療安全】4M5E分析(4M4E分析)とは~意味と方法を事例で解説

4M5Eと書かれた画像
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4M5E分析とは何か~その意味と概要

4M5E分析とはフレームワーク型の分析手法で、インシデントやアクシデントの要因を4つの「M」の視点から分析して、さらに対策を5つの「E」の視点で行う手法です。

インシデントやアクシデントが発生した場合、4M5E分析では下図の4つの「M」の視点から分析していきます。

4M5Eの「4M」を解説した図

 

MAN人間心理的な要因・身体的な要因・技術的な要因

知識的な要因など

MACHINE機器

設備

機器の状況・設備の設計・品質など
MEDIA情報

環境

情報の取得や交換に関する要因・環境的な要因

コミュニケーションなど

MANAGEMENT管理

教育

管理的な要因・組織的な要因・教育訓練の状況

規則やマニュアルの要因など

 

4Mの視点からインシデントやアクシデントの分析を行うことで、より多角的に事象を見ることができ、なおかつ状況を部分的ではなく全体的な視点で分析を行うことができます。

4Mの視点で要因の分析ができたら、次に5Eの視点で対策を実施していきます。5Eの詳細は以下のようになります。

4M5E分析の「5E」を解説した図

 

EDUCATION教育

訓練

業務を安全に実施するための教育や訓練によって対策する

知識・意識・技術の教育・訓練

ENGINEERING技術

工学

安全性を向上させるための機器や設備の対策をする
ENFORCEMENT強化

徹底

業務の確実な実施を強化・徹底する

標準化・マニュアル化の強化や徹底

KYTトレーニング(危険予知訓練)

EXAMPLE模範

事例

業務の模範を示し具体的な事例を提示する

成功事例や模範的行動を示し周知する

ENVIRONMENT環境

背景

物理的な作業環境を改善する

作業場の照度や温度、整理整頓、5S活動

 

4Mで明らかになった要因・原因に対して、5Eの各項目にしたがって対策を立案し具体的な方策を立てていきます。

具体的な4M5E分析の方法と進め方について次に解説していきます。

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4M5E分析の方法と進め方

4M5E分析は下図のような流れで実施していきます。

4M5E分析の手順と方法を解説した図

インシデントやアクシデントなどの有害事象が発生した場合は、4Mの視点から要因(あるいは原因)を分析します。そして、その4Mの要因に基づいて、今度は5Eの視点で対策を立案し実行します。

その際には下図のような4M5E分析のマトリクス表を作成し、横軸を4Mで縦軸を5Eで記述していきます。

4M5E分析のマトリクス表を解説した図

 

例えば4Mの分析によって「MAN(人間)」の部分で「職員の知識不足」という要因が考えられる場合には、その知識不足を解消し改善するために5Eの各項目でどのような対策を行うことができるかを検討していきます。

知識不足を改善するために「教育」し、場合によっては業務の標準化をはかったり、職員同士で教授し合うコミュニケーションを強化するなどの対策を立案し実施していくという流れです。

4M5E分析を実施する際に注意が必要なのは、各項目の枠組みに必要以上に縛られてしまい、枠組みの中でしか分析や対策立案の発想が限定されてしまうことです。また、どの枠組みにも当てはまらないような要因が考えられる場合に、4M5Eの分析に行き詰ってしまうこともあります。

そのため、必要以上に枠組みに囚われず、広い視野で事象の分析を行えるように、他の分析方法も活用してみるなど臨機応変な対応が大切になります。

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医療安全における4M5E分析の事例

次に実際の事例に基づいて4M5E分析の解説をしていきます。

まず発生した事例は次のような薬剤の過剰投与事故です。

肝機能障害があり、虫垂炎で入院していた患者Aに39度の発熱があった。看護師Bは坐薬(25mg)投与の指示を受けて坐薬をとり出す際、他の患者からナースコールを受けて対応した。他の患者の対応後、患者Aの病室に戻り、患者Aに坐薬を投与した。

その後、看護師Bの先輩看護師であるCが捨てられていた坐薬の包装から、坐薬(25mg)ではなく坐薬(50mg)が投与されていたことに気がつき薬剤の過剰投与が発覚した。

この事例をまず4Mの視点から分析してみます。

MAN

人間

看護師Bが指示表を再度確認するのを怠った

途中で業務を中断した

MACHINE

機器・設備

薬庫に25mgと50mgが並んで保管してあった

同じ名前の薬品を並べて保管していた

MEDIA

情報・環境

他に看護師が不在であったため他の患者のナースコールに対応する必要があった

業務内容を誰にも伝えていなかった

MANAGEMENT

管理・教育

誤投与を防止するための管理状態が無く、職員への教育も行き届いていなかった

看護師の人員が不足している

 

4Mの視点から分析した結果、このような要因が考えられたとします。

次に4Mで明らかになった要因に対して、5Eの視点から対策を立案します。

4M5E分析の事例を説明した図

 

それぞれの項目ごとに有効と思われる対策を立案し、実際に対策として実施していきます。

対策案を検討する際には実行可能性に囚われず、可能な限り対策案を出し、最終的に再発防止に有効な対策を実施していくことが大切です。また、必ずしも枠組みに縛られず、枠組みの他にも要因や対策すべき項目がある場合には、その内容も加えた上で対策を立案し実行しましょう。

さらに重要な点は、対策は実行されてからが本番です。

そのため対策を実施した後も、その対策の有効性を追跡評価し、変更が必要であれば再度4M5E分析を行って対策を実施することが大切です。

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まとめ

4M5E分析は、あらかじめ設けられた枠組み(フレームワーク)の中で行う分析手法です。そのため分析と対策の立案がしやすく、さまざまな有害事象の分析を行うことが可能です。

また、多角的な視点かた有害事象の分析をすることができるため、単一的な視点では発想しにくい対策を立案することもできる手法でもあります。

医療のように、さまざまな要素が複雑に絡み合う業務では、狭い枠組みの中では発見できない要因や原因があるものです。そのため、4M5Eの分析手法は、分析の枠組みを広げてくれる方法であるともいえるでしょう。

注意が必要なのは、4M5Eのようなフレームワーク型の分析手法は多角的な視点で分析でき、さらに複数の視点から対策を行えるメリットがある反面、逆にその枠組みに縛られてしまいやすい点です。

4M5E分析を行う際には、必ずしも枠組みに全ての要因や原因があるとは限らないこと、そして対策も枠組み以外の方法が存在する可能性があることに留意しましょう。

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