ヒューマンファクターとは~ヒューマンエラーを防ぐ知恵

暗い階段を登る女性
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ヒューマンファクターとは何か?意味と定義

ヒューマンファクター(human factor)とは、組織や設備、その他さまざまな環境における人間側の行動特性のことです。

次の図は人間を取り巻く環境を可視化したものです。

ホーキンズのSHELL分析モデルを解説した図

この図はSHELL(シェル)モデルといわれるものです。それぞれのタイルは以下のものを表しています。

SSoftware(ソフトウェア)手順書やマニュアル、規則など
HHardware(ハードウェア)機器や機材、設備、施設の構造など
EEnvironment(環境)温度や湿度、照度など
LLiveware(当事者)インシデントに関与した本人
LLiveware(当事者以外)当事者以外のチーム、同僚など

この図でわかるように、人間の周囲にはさまざまな要因が取り巻いています。その中でヒューマンファクターとは、中心にいる人間の行動特性にスポットを当てたものです。

また、一つ一つのタイルの端が波形になっているのは、それぞれの要因が人間の状況(経験や知識、技術など)と環境の状態によって異なることを表しています。

その上で、さらに下図をみてください。

SHELL分析モデルのタイルの凹凸の意味を解説した図

人間と環境は表裏一体の関係にあります。ヒューマンエラーは目の前の状況に対して、人間が異なるモデルを適用したときに発生します。つまり、ヒューマンエラーは文字どおり、人間側の要因によって起こるのです。

もしも人間による要因以外の理由でエラーが発生したなら、そのエラーはヒューマンエラーではありません。

エラーを発生させないように、安全な環境を整備することは重要なことです。しかし、その環境を創るのも、また人間なのです。そしてその観点からヒューマンエラーの防止を目指すのが、ヒューマンファクターの意義です。

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それでは次に人間の行動特性について解説していきます。

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ヒューマンファクター~人間の行動特性

もともと人間にはエラーを起こす特性が備わっています。

その中でも代表的な人間の行動特性には次の4つがあります。

人間の行動特性を表現した図

①錯覚

錯覚は目前の状況を見誤ることです。

そもそもの認識を誤ることによって、その後の行為が状況に合わないものとなります。ヒューマンエラーの中でも非常に多いパターンの特性になります。

②不注意

注意をするというのは、ある特定の対象に向けられた意識のことですが、不注意とはその意識を欠いた状態ということになります。

「うっかりしてしまった」「見落としてしまった」などの行為が不注意にあたります。

③近道行動

近道行動とは、次の「④省略行動」と同様に、本来ならすべき工程の一部を「何らかの事情」によって怠ることをいいます。

近道行動は意図的に行う場合もあれば、意図せずに行う場合もあります。

④省略行動

省略行動とは、本来すべき手順の一部を省略して目的を達成しようとすることです。定められた手順書やマニュアルを遵守せず、早く簡単に済ませてしまおうとすることです。

省略行動は「③近道行動」と同様に、時間的なプレッシャーがある場合や複雑な業務を行うことへの惰性などによって起こります。

 

ここで紹介した代表的な特性の他にも、以下のような特性があります。

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ヒューマンファクター~行為の7段階モデル

人間にはさまざまな行動特性があります。そして、その一つ一つの行為は以下のような過程によって行われます。

D.A.ノーマンの行為の7段階モデル概念図

この「行為の7段階モデル」は認知心理学者ドナルド・A・ノーマンが提唱したものです。人間は一つの行為を行う場合、7つの段階を経て行うことを説明したものになります。

ペットボトルの水を飲む」という行為を例に解説します。

①人間はまず「ペットボトルの水を飲む」というゴールの設定をします。目的を設定すると言い換えてもいいでしょう。

②次に人間は意図を形成します。つまり「ペットボトルの水を飲む」という目的を達成するために、まず「テーブルの上にあるペットボトルを手に取らなければならない」という意図です。

③そして行為内容を詳細化します。ペットボトルを手に取るだけでは水は飲めないので、「キャップを開ける」「ペットボトルを口に当てる」などの細かい行為内容です。

④そして、いよいよ水を飲むという行為を実行します。この行為の実行によって、外界(この例ではペットボトルあるいは水)との接触があります。

⑤次に水が口に入ったことを知覚します。

⑥知覚した感覚によって、状態を解釈します。

⑦そして最後に結果の評価をします。もしも「飲んだ水の量が十分ではない」と評価した場合は、また①ゴールの設定に戻り、もっと水を飲むわけです。

 

この7つの段階は単純な作業や慣れ親しんだ作業の場合、ほとんど無意識に行っています。「水を飲む」という単純な作業を一つ一つを強く意識したり、時間をかけている人はあまりいないでしょう。

しかし、複雑な行為や注意が必要な行為を行う場合は、これらの過程を意識的に行うかもしれません。また、その必要を求められる場面もあるでしょう。いずれにしても人間は、この7つの段階を経て行為を行い、それを繰り返しています。

よく「慣れたときにミスが増える」といいますが、それは7つの段階をあまり意識せずとも行為を行えるようになるからともいえるでしょう。

行為の7段階モデルを知ることの有用性は、ただ人間の行動特性を知ることができるだけではありません。

ヒューマンエラーが起きた時、どの段階で間違ったのか、あるいはどういう原因によってエラーが起きたのかを知る手がかりにもなるのです。

例えば「①ゴールの設定」で既に誤っていたとしたら、原因として考えられるのは業務の目的をそもそも理解していないということになります。

その場合、いくら行動に注意を促しても、有効な対策にならないかもしれないのです。なぜなら、行動を誤る以前に「目的を見誤っている」からです。そのため、仮に①ゴールの設定の段階で誤っていることがわかった場合、正しいゴールを学習または教育する必要があるということです。

ヒューマンファクターの目的は、ただ人間の行動特性を知るだけでなく、それがヒューマンエラーの対策に活かされることにあるのです。

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ヒューマンエラーを防ぐ知恵

人間には様々な行動特性があります。もともとエラーを起こす特性もあれば、エラーを防ぐことができる特性も備わっています。そしてヒューマンファクターを知ることの意義は、それら両面にスポットを当てることにあるのではないでしょうか。

エラーを発生させるのも人間なら、安全を実現するのもまた人間なのです。だからこそ人間側の行動特性をしっかり理解しつつ、環境もその理解に基づいた設計あるいは計画をする必要があるのです。

ヒューマンエラーを防止するためには、まず人間を知ることが大切なのです。

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