ヒューマンエラーの分類を知らずして安全を実現できるのか

トランプのジョーカー
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彼を知り己を知れば百戦殆からず

孫子

ヒューマンエラーの分類(発生要因ベース)

ヒューマンエラーの分類「発生ベース要因」の説明図

①スリップ(slip)

スリップとは目的は正しいが行為が誤っていて発生したエラーのことです。

わかりやすい例をあげると以下のような場合です。

自動車を停車しようと思ってブレーキを踏んだつもりが、誤ってアクセルを踏んでしまい壁に衝突した。

自動車を停車するためにブレーキを踏もうとした目的は正しいのですが、行為段階で誤ったという典型的なエラーです。

つまりスリップとは目的の間違いなどの意図的な要因ではなく、行動段階で誤ったエラーのことをいいます。

また、まだ業務に熟練していない場合など、スキル不足によるエラーもスリップの一種です。目的段階では誤っていないため、学習ベースでのエラーというよりはスキル不足などによるエラーと言ってもよいでしょう。

②ラプス(lapse)

ラプスとは短期的な記憶違い、物忘れなどのことで「記憶のラプス」とも呼ばれます。「うっかり忘れてしまった」などの場合がラプスです。ラプスの場合もスリップと同様に必ずしも目的が誤っているのではなく、あくまでも行為段階でエラーが起こります。

ラプスの例としては以下のような場合があります。

看護師が患者に対して定期的に投与すべき薬剤を忘れたため、患者の容体が悪化した。

このような場合、看護師は決して意図的に患者への投与をしなかったわけではありません。しかし、投与を「忘れていた」ことにより患者の容体が悪化しています。

つまりラプスは意図はなかったのに「記憶違い」や「物忘れ」などによって、望ましくない結果になった場合のエラーです。

③ミステイク(mistake)

ミステイクは意図的(故意)に誤った行為をした結果としてエラーとなった場合のことです。ミステイクの「テイク」とは「取る」という意味ですから、意図的に望ましくない手段を「とっている」ともいえます。

この場合の「故意」とは事故を意図的に発生させたという意味ではなく、誤った行為を意図的に行った場合をさします。

例えば近道行動などによって「やらなければならない手順を意図的にとばす」などの行為です。

もし仮に、被害や損害を与えることを目的として故意に誤った行為をした場合は、もはやエラーではなく犯罪です。そのため、ミステイクにおける「故意」とは、あくまでも事故を起こす意図は無かった場合をさします。

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ヒューマンエラーの分類(人的要因ベース)

ヒューマンエラーの分類「人的要因」の説明図

ヒューマンエラーとは人為的なミスです。その人為的なミスには、大きく分けて3つの要因があります。前項で解説した分類は発生した要因に基づくものです。この項では人的な要因をベースにした分類をみていきましょう。

①認知

まず1つ目は「認知」によるエラーです。認知によるエラーには2種類あります。「認識不足」と「誤った認識」です。

認識不足とは単純に知らない(無知)理解していない(無理解)という場合にあたります。つまり知らない理解していないからエラーになる場合です。これはスキル不足などのミスというよりは、それ以前の学習レベルの問題です。そのため、エラーがこの認識不足に該当する場合には、学習レベルでの教育(あるいは再教育)が必要になります。

また、「誤った認識」とは、元々はどうすべきかという正しい行動を理解しているが事実を誤認してエラーを起こした場合のことです。この場合には事実を正確に認識するように注意を促したり、状況を確認するように促す必要があります。

②判断

2つ目は「判断」です。事実を正しく認識していても、その上でする判断を誤ってエラーに至るケースです。「①認識」と違う点は、あくまでも認識はしている、あるいは理解しているという点です。

この判断ミスによるエラーが発生した場合には、当該エラーが発生した業務についての正しい判断基準を再度確認する必要があるでしょう。

③行動

そして3つ目が「行動」です。人間は認知→判断→行動の順で行為を行います。そのため、仮に認識と判断が正しくても、行動の段階で誤ればエラーになります。

「行動」での誤りは、前項で解説した「スリップ」などが含まれます。目的を達成する意図や認識、判断が正しくても、この行動段階でエラーを起こしてしまうケースです。

「行動」でのエラーには、「スリップ」や「故意によるエラー」に加えて、単純に能力不足で「できない」というのも含まれます。そのため、「行動」でのエラーがあった場合には、なぜ行動を誤ったかを精査した上で、適切な訓練を要することになります。

なお、これらの人的要因はどれか1つに必ずしも限られるわけではありません。複合的にエラーの要因となる場合もあるため注意が必要です。

まとめ

ヒューマンエラーの分類を理解することは、対策を行うためにも非常に重要です。どのような要因によってエラーが発生したのかを理解しないまま、やみくもに対策を実施しても効果がないからです。

また、エラーの分類を把握することによって、学習による教育を行うべきか、あるいはスキルベースの教育や訓練を行うべきかの判断ができます。そのことによって、ヒューマンエラーを学習する機会に変えていくことが可能になります。

職場における安全を実現していくためには、まずヒューマンエラーの種類や分類をよく理解し、適切な対策を実施することが求められるのです。

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