【医療安全】安全とはなにか~安全管理と対策への取り組み

海辺に積み上げられた石
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「安全」という言葉は普段あまり気にかけることもなく使われる言葉です。しかし安全という言葉の意味や定義について、何となく使っているという場合も多いのではないでしょうか。

この記事では安全という言葉の意味や定義、そして安全管理と医療安全について簡潔に解説していきます。

安全とはなにか~その定義と意味について

無形は有形を借りて姿を現す

 

「安全」という言葉について、多くの関係機関がさまざまな定義をしています。

その中でも、よく引用される安全の定義は、JIS規格や安全規格の基準によるものです。その定義では安全をこう定義しています。

人への危害または資材への損傷の危険性が許容できる水準に抑えられている状態

この定義で注目していただきたいのは、安全を最終的に「状態」と定義づけていることです。

状態というものは可視化されていて確認できる場合もあれば、完全には確認できない場合もあります。安全とは「状態」だとするのであれば、状態についても認識する必要があるでしょう。

状態とは、人や事物の「ある時点」でのありさま

この状態の定義についても注目したいのは「ある時点」という部分です。

それでは「ある時点」とは「どの時点」なのでしょうか?

それは安全か否か確認しようとする人が捉えようとする「時点」といえます。つまり、安全を確認しようとする人が、注目する時点です。

現在の安全を確認したいのであれば「現在」に注目する必要があります。

しかし時間は留まることなく流れ続けており、現在を捉えようとした瞬間に捉えようとした瞬間は既に「現在」ではなくなっているかもしれません。

このことからわかるのは安全とは極めて動的なものであるということです。その上、容易にとらえられない非事象性があるともいえるでしょう。

それでは安全とはどのように存在しているのでしょう。まず以下の図をご覧ください。

安全とは何かの意味の概念図

 

安全はハザード(危険)と安全活動との間にある「動的平衡状態」です。ここでいう動的平衡とは次のようなものです。

動的平衡とは互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することにより、系全体としては時間変化せず平衡に達している状態

さきほど安全は動的であると述べましたが、動的なのは何も安全だけでなく危険もまた動的なものなのです。その危険に対して安全を実現するためには、危険と逆向きな動的な活動を必要とします。

それが次に解説する「安全管理」であり「安全活動」です。

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医療安全と安全管理

安全活動とは、安全に関する知識や経験を活用して実践的に行う一連の活動です。この活動を継続的に実施することによって、さきほど解説した平衡状態を達成し維持することが可能になります。

安全活動は安全管理方針にしたがって行われる具体的な行動ですが、この活動は安全を実現しようとする方針に大きな影響を受けます。

もし仮に安全管理の方針が成熟していなければ、具体的な行動として行われる活動もまた未熟なものとなってしまうでしょう。いわば方針は戦略であり活動は戦術の役割を担っており、戦略の間違いは戦術で修正することは困難です。

そのため以下では、安全管理の望ましい設計と計画の方法を解説していくと共に、安全管理を行うにあたって重要となる視点を解説します。

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安全管理の設計と計画~対策の取り組み方

安全管理の設計や計画には、少なくとも2つのアプローチがあります。

その一つが以下の図で示す「後追い型の安全管理」です。後追い型の安全管理とは、何か有害事象(インシデントやアクシデント)が発生したら対応するという管理です。

後追い型の安全管理の基本的な概念は「再発防止」にあります。

再発防止というのは、当然ながら一度は有害事象が発生していることを意味します。つまり安全管理の必要性は、有害事象の発生を前提にして決められるわけです。

この型の安全設計や計画は、後づけによる安全設計になっていくため、組織における安全管理の形が「歪(いびつ)な形」になっている可能性があります。

 

安全設計の重要性を解説した図

 

後追い型の安全管理は、当初は想定できない事象が発生した場合などには必要な対応であり、それ自体がよくないわけではありません。

しかし、有害事象の発生を可能な限り事前に予測し想定しておくことは、安全を管理する上でより重要なことです。

そのためには有害事象が発生する前に、安全を設計段階で組み込むことが大切です。安全を設計や計画段階で組み込むことは、さきほどの後追い型の安全管理と違って先行型の安全管理となります。

先行型の安全管理の基本は有害事象の未然防止にあります。

また、設計や計画段階で安全を組み込むことは、コストの軽減にもつながるでしょう。なぜなら、少なくとも後から設計し直す必要性が減るからです。

そのため安全管理を行う場合には、可能な限り想定したリスクやハザードに対して、より有効な安全設計や計画を事前に組み込んでいく必要があるのです。

安全を組み込む機会はさまざまあります。例えば業務の改善を行うときやマニュアルの見直しをするとき、新しい機器やシステムの導入時などです。

また、現場教育の中に安全教育を取り入れながら人材育成を計画することも可能でしょう。

それでは次に安全管理を行う上で注意したい事項について解説していきます。

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安全と安心~状態と認識の不一致

安全という状態を認識するのは基本的に人間です。機器やシステムで安全を管理している場合を除けば、状態を認識し判断しているのは人です。

それを踏まえた上で注意したいのが、状態と認識の不一致です。

そもそも有害事象の多くは、目前のシステムに合わないモデルを適用されたときに発生するといわれています。つまり、状態を見誤っているか、状態に誤った行為を適用しようとしたか、です。

下図は状態と認識の不一致を大まかに説明したマトリクスです。

安全と安心の違いを説明した図

この図でいうと左下の「不安全な状態なので不安」というものであれば、おそらく不安全な状態に対して慎重な行動やチェックをしながら行動できます。また、その状態なら対策が必要だという認識と判断が可能であり、管理対象として注視することもできます。

しかし左上の「安全な状態ではないのに安心している」という部分ではどうなるでしょうか?

このパターンでは不安全な状態であるにもかかわらず、安全な行動や管理を行うという認識と判断がしずらいのではないでしょうか。

さらに、ここで付け加えて解説するとしたら、安全の反対は「ハザード」や「リスク」だけではなく「不安全」でもあるということです。

不安全というのは状態を示す場合もあれば、不安全な行為を示す場合もあります。そしてこれらの状態や行為を生む理由の一つが、状態と認識の不一致なのです。

それでは次に安全管理をどのような視点で行うべきか解説していきます。

リスクマネジメントとセーフティマネジメント

安全管理にはリスクマネジメントとセーフティマネジメントという2つの用語があります。

リスクマネジメントは文字通りリスクを管理しようとするマネジメントであり、セーフティマネジメントは安全を管理しようとするマネジメントです。

「これらは結果、同じことなのではないか」と考える人もいるかもしれませんが、なにを管理しようとするかによってマネジメントのアプローチは変わります。

以下の図は有害事象を黒、通常に行われた業務を白、そして優れた行動特性によって行われた業務を黄色で示したマインドマップです。

 

安全活動の方法を解説した図

 

多くの場合、安全管理は黒の有害事象への対策や管理という対応をとります。組織内で発生したインシデントやアクシデントの報告などに基づいて、根本原因を特定して対策をすることによって安全を実現しようとするアプローチです。

一方で白に着目する場合には、なぜ通常の業務が問題なく行われているのかを分析し、今後の安全管理に活用しようというアプローチです。

そして黄色の優れた行動特性に着目する場合には、安全な業務をより高次のレベルで実施している職員等から行動特性を抽出し、その特性を組織全体で共有することによって安全を実現しようとするアプローチです。

この図からわかるように、何に着目して安全管理を行うかという視点の違いによって、安全に対するアプローチは変わります。

これら3種類のアプローチは、どれが優れているとか劣っているかという意味ではありません。どのアプローチもケースによっては必要であり、どのアプローチをすべきかは適時適切に判断しなければなりません。

大切なことは、管理とはいつも一定の視点だけで状態を認識するだけでなく、ときには失敗だけでなく成功からも学び取ることがあるというような複視眼的な物の見方とその運用だということです。

場合によっては「他山の石」として自組織ではまだ発生していないような他者の事例から学んだり、優れた行動特性を抽出したりする視点が必要なのではないでしょうか。

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まとめ

冒頭で引用した言葉「無形は有形を借りて姿を現す」とは、安全を理解する上で重要な本質を表現した言葉です。

人間や組織は、ときに安全を失われたときに意識することがあるものです。また、有害事象という現象を借りて、安全への意識を高めるという皮肉な面もあります。

安全も危険もハッキリと認識できるものならば、安全管理も随分と行いやすくなるでしょう。

しかし残念なことに、安全や危険というものは、鳴りを潜めていることが多分にあるのです。

このような性質を備えたものと対峙するとき、人間は硬直した思考や機能性の乏しい安全管理では不十分です。そのため、組織としても個々人も「五感」をフル活用する必要があります。

安全は与えられるものではなく勝ち取るものです。そのためにも、状態への洞察と継続的な活動が不可欠なのではないでしょうか。

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