因果関係図~書き方と作成方法を事例をつかって解説

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因果関係図とは~その意味と概要について

因果関係とは何か~定義に必要な3つの条件

因果関係図を作成するにあたって、まず「そもそも因果関係とは何か」を確認しておきましょう。

問:因果関係とは何か?

答:「原因」と「結果」の関係のことです。

そして因果関係が成立するためには原則的に、次の3つの条件を満たしている必要があります。

因果関係が成立する条件を解説した図

  1. 時間的順序がある
  2. 共変関係がある
  3. 他に重要な変化がない

①時間的順序がある

「時間的順序がある」とは、原因が結果に対して時間的に先行しているということです。つまり「原因→結果」という順序であり、「結果→原因」という順序ではないということです。

②共変関係がある

「共変関係がある」とは、原因と結果は共に変化する関係性にあるということです。原因が発生したことによって結果もまた発生した場合をいいます。

③他に重要な変化がない

「他に重要な変化がない」とは、原因と結果という関係の他に重要な変化が存在しないということです。もしも他に重要な変化が存在していて「結果」が生じている場合、他の原因や真因が存在する可能性を否定できないからです。

 

因果関係が成立するには原則的に、これら3つの条件を全て満たしている必要があります。

結果とは「解決したい問題」

因果関係図を作成する場合の「結果」とは、発生した望ましくない事象のことです。

つまり「解決したい問題」のことです。
因果関係とは何かを解説した図

一方で「原因」とは、その解決したい問題を発生させている事象や事柄のことです。

因果関係図を作成する目的は、望ましくない事象の再発を防止するためです。そのためには、望ましくない事象(結果)を発生させている「原因」に有効な解決へのアプローチをする必要があるのです。

また因果関係図を作成しようとする段階では、すでに出来事の流れや原因と考えられることの目星がついているはずです。RCA(根本原因分析)による分析の過程では、まず出来事の全体像を把握し、それらの出来事を掘り下げていくことによって根本原因を探っていきます。そのため、因果関係図の作成段階では、それまでの過程において分析された「(仮)原因」と思われる事象や事柄に対する「確認」と「特定」を行うわけです。

因果関係図の意義と目的を解説した図

因果関係図の作成による原因の特定をもって、いよいよ本格的な対策を実施することになります。有害事象の対策を実施するためには、その事象を発生させている原因を正確に把握する必要があるからです。

もしも因果関係の確認と特定を誤れば、誤って認識している原因に対策を実施することになり、時間や労力をムダにしかねません。また、そもそも解決したい問題も放置されることになり、有害事象の再発を防止することが困難になってしまいます。そのため、因果関係図を作成することによって真因を把握することと同時に、誤って認識している原因や疑似的な因果関係を排除する必要があるのです。

それでは次に具体的な因果関係図の書き方と作成方法を解説していきます。

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因果関係図の書き方と作成方法

因果関係図は原因から結果に向かって書く

因果関係図を作成する上で、まず注目したいのは矢印の方向です。

因果関係図の書き方と作成方法を解説した図

通常の事故分析では結果から原因へ分析を進めていきます。しかし因果関係図の作成をする場合には、根本原因から結果に向かって進めていきます。

前述したように、因果関係図を作成する段階では、すでに出来事の流れや原因の仮説が立っているはずです。そのため、因果関係図を作成する段階においては、それまでの分析とは逆向きに因果関係を確認していくことになるのです。

つまり根本原因と仮定した問題が、本当に結果へと繋がっているのかを逆向きに確認していくわけです。この作業を通じて、対策すべき原因が本当に結果(有害事象)の再発防止になり得るのか確定できるのです。

因果関係図を作成する4つのポイント

因果関係図を作成する際には次の4つのポイントに注意しましょう。

  1. 「原因」と「結果」の関係を明確にする
  2. 漠然とした曖昧な表現をしない
  3. 否定的な表現をしない
  4. 人為的なエラーやマニュアルの不遵守の「背景」に注意する

以下で1つずつ解説していきます。

1.「原因」と「結果」の関係を明確にする

因果関係図とは文字どおり、原因と結果の関係を明確にする図です。そのため因果関係図に記入する文章は、すべて原因もしくは結果と関連のある事項になります。

また、「どのような原因」によって「どのような結果」になったのか理解できること、そしてそれらの内容が因果関係として繫がっているかを意識的に確認する必要があります。

2.漠然とした曖昧な表現をしない

漠然とした曖昧な表現とは、その内容を読んでも事実を把握できないような表現です。事実を把握できなければ原因もしくは結果を理解するのは不可能です。そのため、因果関係図に記入する文章は可能な限り具体的な内容を書くようにしましょう。

3.否定的な表現をしない

否定的な表現とは、有害事象に関与した人物の人格を否定するような内容などです。

因果関係図の目的は、原因と結果の関係を明確にすることであって、犯人さがしのような目的で行うわけではありません。また、特定の人物によるミスを責めるために行うものでもありません。

重要なことは事実を正確に把握すること、その内容をふまえて有害事象の再発防止のために有効な対策を実施することです。そのため図を作成する際には、できるだけ否定的な表現を避けるように努めましょう。

4.ヒューマンエラーやマニュアルの不遵守の「背景」に注意する

原因となる項目がヒューマンエラーやマニュアルの不遵守などによる人為的なものであるとき、その背後に人為的な問題を引き起こしている背景が存在することが多くみられます。ヒューマンエラーなどの人為的な問題を「原因」として認識し、「結果」として捉える視点を欠いているケースです。

ヒューマンエラーなどの人為的な問題は、その背景要因の中に原因が潜んでいるものです。つまり人為的な問題は原因とされがちですが「結果」であることが多いということです。

また、マニュアルの不遵守などによる問題だけでなく、マニュアルを遵守しているにもかかわらず事故等が発生した場合には、そもそもマニュアルの不備や不徹底などの組織的な原因が考えられます。そのため、因果関係図を作成する際に人為的な問題がみられた場合には、意識的にその背景に根本的な原因が存在しないかを検討することが重要です。

 

以上これらのポイントに注意しながら具体的に因果関係図を作成する方法を次に解説していきます。

因果関係図の事例とテンプレート

因果関係図の事例とテンプレート

因果関係図の事例とテンプレート

因果関係図は分析対象となる有害事象に至った原因を明確にして特定するために行う作業になります。因果関係は有害事象の内容によりケースバイケースであり、定型となる型式が存在しません。また、事例とすべき形も発生した事象の内容や至った経緯などによっても異なります。

因果関係図の目的は綺麗な図表を作成することではありません。目的はあくまでも発生した有害事象の原因を特定することにあるのです。はじめから先入観をもってテンプレートなどの枠組みに当てはめようとすると因果関係が歪んだものになりかねません。

そのため因果関係図の作成をする上で重要なのは、望ましくない結果と原因の関係が理解できるかどうかです。事実に基づきながら原因と結果の関係を明らかにし、再発防止のために有効な対策ができるように真因を特定することこそ図を作成する目的となります。

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