目次
SWOT分析とは何か?
SWOT分析の意味と目的
SWOT分析とは、組織が有する「内部環境」と組織を取り巻く「外部環境」という2つの側面から現状を把握し、今後の戦略方針や改善策などを立案するために行う診断手法です。SWOT分析は組織の診断だけでなく、個人の診断手法としても広く活用されており、業種や業態を問わず幅広い分野に対応できる診断手法でもあります。
さらに内部環境を「強み」と「弱み」、外部環境を「機会」と「脅威」という枠組みに分け、この4つのフレームワークに焦点を当てて分析していきます。
SWOT分析の「SWOT」とは、4つの軸となる「強み(STRENGTHS)」「弱み(WEAKNESSES)」「機会(OPPORTUNITIES)」「脅威(THREATS)」それぞれの頭文字からきており、「SWOT分析」の読み方は「スウォット分析」と読みます。
SWOT分析を行う目的は、主に事業戦略の方針を決定したりマーケティングプランの策定などですが、組織としての目標の設定や個々人の目標設定などのためにも行われます。いずれにせよ、現状を把握した上で今後の行動指針を決定するための手段として非常に有効な分析手法でもあるのです。
また、SWOT分析は現状から将来にわたる変化への着目をする分析手法でもあります。変化とは例えば「強み」「弱み」という要素は主に現状を把握しようとするフレームであるのに対して「機会」「脅威」というフレームは、現在から将来にわたって起こりうる状況を踏まえてみていきます。
そのため、SWOT分析は現状の把握だけでなく将来にわたって役立つ分析として、戦略策定や目標の設定などに極めて親和性の高い分析方法だといえます。
それでは次に具体的なSWOT分析のやり方と方法を解説するとともに、基本となるテンプレートを紹介していきます。
SWOT分析の方法~クロスSWOT分析
SWOT分析のテンプレート
SWOT分析は以下の図のようなテンプレートに、各々の要素を記載してクロス分析していくことが基本となります。
SWOT分析におけるクロス分析とは、横軸に「内部環境」と「外部環境」を並べ、縦軸に「プラス要因」と「マイナス要因」に並べます。
内部環境とはその組織(あるいは個人)が有する「強み」「弱み」のことであり、端的にいうと保有するリソース(資源)です。一方で外部環境とは、その組織(あるいは個人)を取り巻く外的な要因であり、SWOT分析では「機会」「脅威」として扱います。
また、これらの要因は階層性があり、内部環境(内的要因)である強みや弱みを外部環境が取り巻いているという構造をなしています。つまり、これらの要素は互いに関連し合っており、常に流動的に変化しています。
SWOT分析を行うポイントとなるのは、これらの構造をしっかりと踏まえた上で、変化を正確に捉えていくことです。そして各々の要素はそれぞれが独立して存在するのではなく、相互に作用し合っており切り離せない関係性にあることを理解しておくことが重要になります。
例えば「強み」と「弱み」は表裏一体であったり、「機会」と「脅威」も判断する人によっては正反対の見方をするかもしれません。そのためSWOT分析を実施する際には、目的を明確にし、共通理解に基づいた分析を行うことが大切になります。
それでは次にSWOT分析の具体的な方法を解説していきます。
SWOT分析のやり方と方法
前述したように、SWOT分析を行う場合は明確な目的を持つことが極めて重要になります。目的によって分析の内容は大きく変化する場合もあるため、分析の目的は事前に明確化しておきましょう。
分析の目的が明確になれば、分析を行うための各々のフレームがハッキリとしてきます。それらを踏まえた上で以下の図のような手順と流れで分析を進めてきます。
- 「強み」「弱み」「機会」「脅威」という4つの枠組みを各々書き出していきます。
- 書き出した内容ごとにまとめる。
- まとめた内容を4つのフレームごとにグループ分けする。
- クロス分析のテンプレートに当てはめて文章化する。
この4つの段階で進めていくとクロス分析の表が完成します。
そしてその分析表に基づいて分析を行っていくことになります。次の項では具体的な事例をつかって、ここからどのように分析から具体案を立案するのかを解説します。
SWOT分析の事例
SWOT分析の具体例
分析の目的に沿って作成したクロス分析表に基づき、いよいよ分析から具体的な立案をしていきます。ここでは事例として「組織内における人材育成」を目的としたSWOT分析を想定していきましょう。また、通常は各項目に複数の内容が書き出されることが多いと思いますが、ここでは仮定の事例として各項目に1つの内容に簡素化しています。
まず組織における人材育成というテーマで下図の内容が考えられるとします。
この事例の場合、組織の「強み」は学習意欲が高い若いスタッフが多いということになります。また一方で組織の「弱み」は、意欲的な若いスタッフを教育する側の人材が不足しているということになります。
このケースにおける内部環境の分析としては、若いスタッフの学習意欲を組織として活かせておらず、せっかくの成長機会をロスしていることになります。
また外部環境としては、外部講師を招いて研修等を行う「機会」は多いものの、なかなか教育を行える中堅スタッフの確保がままならず、それが内部環境における「教育側の人材不足」の「脅威」となっています。
このようなケースでは外部講師を招いての研修機会、つまりOff-JTは充実しているものの、日常業務内での教育であるOJTが不足しており人材育成のマイナス要因となっているといえるでしょう。
そのため、SWOT分析に基づいた対策案としては、組織における人材育成の弱点となっている真因は、若いスタッフに日常業務内での教育を行える経験豊富な中堅スタッフを確保できていないことにあると結論づけることもできるわけです。
このケースの場合、人材育成という少し漠然とした組織的課題が、中堅スタッフの人材確保という組織を取り巻く環境からきていることが明確になります。そのため対策案としては、組織的な優先事項として中堅スタッフの人材確保に、より多くの経営資源を投入するという策を立案することができます。
このようにSWOT分析は、必ずしも明確にわからない組織的な課題や目標を、より明確にすることができ、それを踏まえた上で有効な対策の立案を行うことができるのです。
まとめ
SWOT分析は様々な角度から組織(あるいは個人)を見つめ直す貴重な機会になるものです。4つのフレームから1つの目的や課題をみることで、当初は思いもよらなかった問題を発見したり、より有効な案を策定することもあります。そのためのフレームワークとしてSWOT分析はとても適した手段です。
また、SWOT分析のポイントと注意点としては、組織の内外に起こっている変化を見落とさず的確な現状把握と将来への繋がりを掴むことです。組織としても個人としても、内部と外部は決して切り離されたものではなく、相互に作用していることを洞察することです。
分析を「何のために行うのか」という根本的な目的を明確にし、その目的を達成するための最善策を模索することこそがSWOT分析を行う真の目的なのです。