リスク(risk)とは~その意味と定義をわかりやすく解説

山間の岸壁
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リスクとは何か~その意味と定義についての適切な日本語

リスクの意味と定義

リスク(risk)とは将来への「不確かさ」と、その「影響」のことです。この場合の不確かさとは、好ましくない事象が発生する可能性のことです。日本ではリスクという言葉がネガティブな意味で使用されており、「危険」あるは「危機」という意味で使われることが多い言葉です。

しかし、危険には「Danger」「Hazard」、危機には「Crisis」という訳が存在します。また、分野によっても定義が微妙に異なり、やや曖昧な言葉でもあります。しかし、おそらく最も適切な日本語は「危険性」だと思います。

例えば米国の経済学者であるフランク・ナイトはリスクを以下のように定義しています。

リスクとは不確定なことについて確率的に計測できるもの

フランク・ハインマン・ナイト(Frank Hyneman Knight)1885年-1972年
米国の経済学者。ミシガン大学からテネシー大学を経てコーネル大学で学位を取得する。その後にコーネル大学で講師、シカゴ大学で講師、そしてアイオワ大学で助教授、シカゴ大学教授を歴任。アメリカ経済学会会長。
「ナイトの不確実性」という概念の提唱者として知られる。

少々わかりずらい定義ですが、ようするにリスクは不確定な要素を事前に測定できるものと定義しています。つまりナイトは事前に測定できる「リスク」と測定不能な「不確実」を明確に区別すべきとしているのです。

しかし実際にはリスクという言葉が測定の可否にかかわらず使われることが多く、また分野によっても定義づける言葉が違う場合があるため、あまりハッキリと定義づけるのは困難だといえます。

さきほどリスクの定義として最も適切なのはおそらく「危険性」であるとした理由もここにあります。危険性というのは事前に感じるものであって、事後的に感じるものではありません。一方でリスクを「危険」とした場合、必ずしも事前に感じる必要はありません。突如として目の前に迫る状況に危険を感じることはできます。事前に想定できずに突如として訪れる危険を目前にして「危険性」を感じることは少ないでしょう。なぜなら危険が不確かではなく「確か」だからです。

つまりリスクとは「事前に想定できる好ましくないこと」を意味します

また、リスキー(risky)という言葉は、「際どさ」を意味しています。

人も組織もリスクを単体で求めることはあまりありません。リスクは好ましくないことなので、わざわざそれ自体を求めはしません。それならなぜリスクを負うかといいますと、リスクを負ってでも得たいものがあるからです。

その理由を次に解説します。

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リスクの語源と対義語~ベネフィットとの関係性

元来リスクとはポジティブな挑戦に付随しているものです。リスクの語源は「岸壁の間を船で行く」だといわれています。その真意は、あえて岸壁の間を通過するというリスクを負ってでも、辿り着きたい場所があるとの意味です。つまり勇気ある行動という意味になり、端的にいうと「冒険」です。

それでは、あえてリスクをおかしても辿り着きたい場所とは何か?

それはベネフィットのある所です。ベネフィットとは「利益」「便益」とも訳される言葉です。類似した言葉に「メリット」という言葉があります。しかし、ベネフィットとメリットは同義ではなく違う概念です。

メリットとは、あることを行うことによって得られる利益そのものです。対義語はデメリットです。デメリットは不利益のことです。それではベネフィットとは何なのかというと、メリットによりもたらされる効果です。

例えば女性が顔にお化粧をするとき、ただ顔に薬品を塗りたくりたいわけではありません。化粧をすることにより綺麗になるというメリットがあるからするわけです。このような場合、ベネフィットとは綺麗になったことによって異性にモテたとか、綺麗だと言われて嬉しいなどの効果です。つまりベネフィットとは「メリットのメリット」なのです。

ではなぜリスクの解説にこのベネフィットの説明をしたかというと、リスクはベネフィットに付随していることが多いからです。まず以下の図をご覧ください。

リスクの意味と定義を解説した図

リスクというのは図のようにベネフィットの陰に隠れていることが多いのです。そして陰に隠れていることで、ベネフィットを得ようとする人あるいは組織には不確実なものにみえるわけです。

人も組織も不確実なものを本質的に回避したいものです。そしてその不確実さを警戒するのです。だからこそリスクを負ってでもベネフィットを得るために行動するか否か迷うこともあるのです。そういった場合、人も組織もリスクを見積り、どう選択をするのかを意思決定します。

ここで重要なのは、リスクは必ずしも行動することだけに伴うだけでなく、行動しない場合にもリスクが存在する可能性があることです。

リスクとハザードの違い

リスクとハザードの決定的な違いは、リスクとは事前に想定できる危険性であるのに対して、ハザードは想定できない危険を含む点です。また、ハザードの厳密な定義は、人やモノなどに対して危害や損害を与える可能性のある現象もしくは行為のことです。

どちらも危険をさす言葉であることは同様ですが、ハザードはリスクに比べて、より潜在的であり予測が難しいものであるといえます。また、リスクは前述したように本来ベネフィットを得るために付随していることであるのに対して、ハザードはベネフィットの有無にかかわらず存在しうるものです。

つまりハザードは、人あるいは組織が望んでいなくても存在する危険そのものといえます。

ハザード(hazard)とは~その意味とリスクとの違い

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リスクの例と使い方

ベネフィットとリスクの関係を例えるなら薬の作用と副作用です。「効能(作用)」というベネフィットと「副作用」というリスクの関係です。効能を期待して薬を服用した場合、同時に副作用というリスクを負うことになります。つまりベネフィットとリスクは光と影のように表裏一体の関係にあり、どちらか一方を選択した場合に付随してくるという一面があるのです。

このような場合は、薬を服用する人に対して専門家から効能と副作用の説明があるでしょう。そしてその際に副作用について説明する場合、リスクという言葉が使われるわけです。

薬を服用することで得られるベネフィットに対して、副作用による望ましくない症状というリスクを負います。しかし、それでも薬を服用するとしたら、それはリスクを負うだけの価値があるベネフィットが存在するからです。

それでは何を基準に人はリスクを負ってでもベネフィットを得ようとするのかを次に解説していきます。

リスク評価~見積りと算出方法

リスクを見積もるとき、人はその程度によって判断をしようとします。例えば以下の図ような形です。

リスクの程度と段階を解説

リスクが取るに足らないものなら、ベネフィットを得るために躊躇なく行動できます。一方で許容できないリスクが想定される場合には、行動することに躊躇してしまうでしょう。

そしてその「取るに足らない」とか「許容できない」ということを、どのように算出し評価するかというと以下のようになります。

影響度×発生可能性=リスク

リスクの程度は誰にとっても同様に認識されるかというと、そうではありません。まったく同じ状況に対しても、人それぞれの感じ方や評価も違います。つまりリスクの程度に対する評価は絶対的なものでなく、相対的なものであるといえます。また、リスクに対する反応や対処も人によって異なります。

いずれにしてもリスクを感じた場合、何らかの形でそのリスクに対して対応することになります。次の項ではリスクの種類と分類、そしてその対処について解説していきます。

【リスクアセスメント】 意味と手順~進め方のわかりやすい解説

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リスクの種類と分類~対応と対処方法

前項で解説した「影響度×発生可能性=リスク」というリスク評価を図式化したのが以下の図です。

リスクの種類と分類を解説した図

縦軸に影響度の大小、横軸に頻度(発生可能性)をみていきます。そしてリスク評価を4つのゾーンに分類します。

  1. リスクの保有(許容)
  2. リスクの移転(転嫁)
  3. リスクの低減
  4. リスクの回避

リスクの保有(許容)

リスクの保有(許容)とは、リスクの存在は認められるが影響も小さく頻度も少ないため、特段の配慮を必要としない場合をさします。つまりリスクを存在させていても問題はないと判断できる場合です。

リスクの移転(転嫁)

リスクの移転(転嫁)とは、リスクの存在が認められるため、その影響を第三者に移転する場合をいいます。一番わかりやすく事例は保険への加入等です。

リスクの移転や転嫁は、主に発生する可能性のある好ましくない事象を予防する意味あいもあります。

リスクの低減

リスクの低減とは、リスクの影響ならびに発生頻度を減らすことです。安全対策などでは最もポピュラーな対応といえます。

リスクの低減は、発生した好ましくない事象そのものに対する対応をさします。リスクの移転との違いは、移転が予防的な意味あいがあるのに対して、低減とは主に発生時の対応をさすことです。

リスクの回避

リスクの回避とは文字どおり、リスクを避けることです。一般的にリスクヘッジと言われています。

リスクの回避は、ある意味では特段なにも対策するわけでもなく、そもそもリスクが存在する行為などを行わないことで対応します。影響が甚大な場合や発生する危険性が高い場合、リスクを避けるのは戦略的に理に適っています。

 

リスクとリスクマネジメント

リスクマネジメントとは、リスクの存在を認識した上で評価し、適切な対応をしていくための管理です。

日本語ではよく危機管理と訳されることが多いのですが、厳密には意味が異なります。その理由としては、リスク=危機ではないからです。危機とは一般的に「Crisis」と訳されるため、危機管理を直訳するとクライシスマネジメントとなります。

また、危機という言葉は本来、すでに発生した事態をいいます。そのため、危機管理とはすでに発生した事態への対応などをさす言葉です。

一方でリスクマネジメントとは、想定される危険性に対する一連の管理をさします。そもそもリスクとは、事前に想定される危険性をさす言葉であるため、リスクマネジメントもまた危険性に対する事前的な管理をさすのです。

リスクマネジメントの詳細は以下の記事を参照してください。

リスクマネジメントとは~その意味と手法の解説

2018.01.18

まとめ

本来リスクとはポジティブな何らかの活動に副次的にあるものです。リスクを回避する最善の方法は、ベネフィットを捨て去ることかもしれません。

例えば自動車を運転しなければ、運転手として自動車事故を起こすリスクは避けられます。また、例えば病院に行って医療を受けなければ、医療事故にあう可能性もなくります。

しかし人も組織も、有益な結果を得るために何かを行う必要性があります。病気になれば病院に行って、適切な治療を受ける必要があります。

人や組織の活動には、多かれ少なかれ何らかのリスクは存在するといえます。

いずれにしても重要なことは、リスクの意味と概念を理解した上で、適切な評価と判断をすることではないでしょうか。

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