目次
リスクコミュニケーションの意味
リスクコミュニケーションとは関係者間の意思疎通
リスクコミュニケーションとは、あるリスクについて関係者間(ステークホルダー)で情報を共有したり、対話や意見交換を通じて意思の疎通をすることです。それによって、リスクに関する相互理解を深めたり、信頼関係を構築していきます。
私たちは日常的にも、リスク情報の受信者でもあり、発信者でもあります。
例えばテレビを視聴していて「緊急気象情報」や「緊急地震速報」が放送中に流れ、何の予告もなく受信者になることもあります。テレビの天気予報で「明日は気温が30℃を超えるので熱中症に注意しましょう」と放送された場合、その天気予報を視聴していた該当地域の視聴者は、リスクコミュニケーションを受信したことになります。
一方で、身の回りの人に対して自分が発信者になることもあります。
子育てをしている方なら、日常的に子供に対して「してはいけないこと」「起きたら大変なこと」などのリスクを発信しているでしょうし、子供もまた受信者となっているわけです。
このように、リスクコミュニケーションとは何か特別なものではなく、私たちの日常の至るところに存在するコミュニケーションの1つです。
リスクコミュニケーションは、一方的な発信だけを指すものではありません。
情報というのは発信者がいれば、当然ながら受信者がいます。一般的に情報の主たる発信者は、行政やメディア・専門家などが担っている傾向があります。そしてその行政やメディア・専門家などが、利害関係者(一般の人々)に発信するという場合が多く見受けられます。
しかし、情報の受信者側も意見を表明したり、関心を寄せるということがあります。このような場合も、広義の意味ではコミュニケーションとっているといえます。
リスクコミュニケーションとは、一方的な情報の発信や受信だけではなく双方向的な意思疎通なのです。
リスクコミュニケーションの目的
リスクコミュニケーションの目的は信頼関係の構築
リスクコミュニケーションは、関係者間(ステークホルダー)でリスクに関する意思疎通をすることです。意思疎通の手段は、メディアを通じて行われることもありますし、対話や意見交換を通じて行われることもあります。
いずれにしても、何らかの意思疎通を通じて、リスクに関する情報を交換し共有するわけです。
そして、リスクコミュニケーションの目的は意思疎通それ自体にあるのではなく、信頼関係の構築にあります。
リスクを発信する、あるいはリスクに関して意見交換をするなどの行為は、リスクコミュニケーションの手段であって目的ではありません。もしもリスクに関する情報を発信したり、意思疎通すること自体が目的ならば、一方的にメディアや専門家が発信をすれば良いということになります。
しかし、リスクとは関係者の間で双方向的に共有されたり、理解を通じて、リスクを回避したり除去あるいは低減することによって意味を為すのです。
そのため、リスクコミュニケーションの目的は、リスクに関係する人々の間において、信頼を構築していくことにあるのです。
それでは次にリスクコミュニケーションの進め方をみていきましょう。
リスクコミュニケーションを進める5つの段階
リスクコミュニケーションは、次の5段階で進めていきます。
①リスクについての情報を伝える
②利害関係者(ステークホルダー)の間で意見の交換をする
③リスクについて相互の理解を深める
④利害関係者(ステークホルダー)の間で責任を共有する
⑤利害関係者(ステークホルダー)の間で信頼を構築する
リスクコミュニケーションは、リスクに関する情報を伝達することから始まります。当然ながらリスクを認識していなければ、それを回避したり除去することはできません。
そのため、リスクに関する情報を関係者に伝えることは非常に大切です。しかし、情報を伝えるだけでは、コミュニケーションとはいえません。
リスクに関する情報を伝達したら、次にそのリスクについて関係者間で意見を交換します。この段階からリスクコミュニケーションが本格化するといっても過言ではありません。
意見交換の目的はリスクに対する相互理解を深め、合意形成をするために行います。その上で、関係者間における責任や責務の共有をします。
これらの段階を経て、最終的に関係者間での信頼構築を目指します。
まとめ
リスクコミュニケーションは、あるリスクに関する情報を関係者間で共有し、対話や意見交換を通じて相互の理解を深め、信頼関係を構築するプロセスです。リスクに対する理解や認識は異なることがあり、それを明確にするためにリスクコミュニケーションが重要です。
以下は、リスクコミュニケーションの進め方を示す5つの段階です:
- リスクについての情報を伝える: リスクに関する情報を的確かつ明確に関係者に伝えます。これはリスクの特定や評価の結果、および対策に関する情報を含みます。
- 意見の交換をする: 関係者間でリスクに対する意見を交換し合います。異なる立場や専門知識を持つ関係者が集まり、リスクについての理解を深めるためのプラットフォームを提供します。
- リスクについて相互の理解を深める: 意見交換を通じて、関係者同士がリスクに対する理解を深め合います。これにより、異なる視点や期待を理解しやすくなります。
- 責任を共有する: リスクに対する責任や責務を関係者間で共有します。各関係者がリスクへの対応においてどのような責務を果たすべきかが明確になります。
- 信頼を構築する: リスクコミュニケーションの最終的な目標は、関係者同士の信頼関係を構築することです。信頼があれば、リスクに対する共同の取り組みがより円滑に進むでしょう。
リスクコミュニケーションは一方向的な情報の伝達だけでなく、双方向的な意思疎通を重視します。関係者同士が共有し合いながらリスクに向き合うことで、持続的かつ効果的なリスク管理が可能になります。