【レジリエンス】定義と意味についてのわかりやすい解説

海辺でヨガのポーズをとる人のシルエット
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レジリエンスとは何か?その定義と意味について

レジリエンスの概要

レジリエンス(Resilience)とは「回復力」「復元力」あるいは「弾力性」とも訳される言葉で近年よく聞かれる言葉です。元々は物理学や生態学などの用語として知られる言葉ですが、最近ではとりわけ心理学の分野でよく聞かれる言葉です。また安全工学やリスク管理の分野においても注目されている概念でもあります。

レジリエンスは分野によって様々な使われ方をしており明確な定義はありません。

例えば自然災害からの迅速な復旧をレジリエンスとする場合もあれば、心理学のようにストレス等に対する個人の対処能力をレジリエンスとする場合もあります。こういった側面からレジリエンスは「いくつもの顔をもつ言葉」といわれることもあります。

いずれにしてもレジリエンスは、その概念自体が非常に柔軟であるといえます。固定的な概念がないからこそ多様な分野で用いられ、個人や組織といった様々な状況や環境に対応できるわけです。

また、レジリエンスを理解する上で重要な性質として「跳ね返す力」があげられます。

レジリエンスとは何かいう意味と定義を解説した図

レジリエンスは何らかの外圧に表層的に抵抗する力というよりは、上の図のように内なる弾力性によって外圧を跳ね返すような内から外への強さであるといえます。そのため次の項で解説するように、単純な外圧への表層的な抵抗力と区別することも場合によっては必要となるでしょう。

レジリエンスの対義語からみる定義

レジリエンスと対義的な概念としてよく用いられるのが「脆さ(もろさ)」です。脆性あるいは脆弱性といってもいいでしょう。しかしこの脆性あるいは脆弱性には対語として「靭性(じんせい)」と「延性(えんせい)」という概念が存在します。

まず靭性(じんせい)とは簡単にいうと「こわれにくさ」のことです。一方で延性(えんせい)とは「しなやかさ」のことです。レジリエンスは靭性と延性の性質を双方とも内包しています。

このように対義的な概念に基づいてレジリエンスを敢えて定義づけると「レジリエンスとはしなやかな強さである」ということができます。

それでは次の項ではレジリエンスと類似しており混同されやすい概念をみていきましょう。

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レジリエンスと類似していて違う意味のもの

レジリエンスと混同されやすいものに以下の3つの要素があります。

  1. 頑強性
  2. 冗長性
  3. 元の状態への回復

1.頑強性

レジリエンスを「強さ」と表現する場合は注意が必要です。「強さ」というものは状況や環境によって捉え方が変化する曖昧かつ相対的なものです。ある環境では「強さ」とされる性質が、別の環境では弱さに変わる場合もあります。例えば海を泳ぐ魚は水中に「強い」という特性があっても、地上ではその強みが「弱さ」に変わります。

レジリエンスを「強さ」とする場合に混同しやすい主なものに「ストレングス」と「ロバストネス」があります。

  • ストレングス(strength)とは「逞しさ」「力強さ」などのことです。
  • ロバストネス(robustness)とは「頑強さ」「堅牢性」などのことです。

レジリエンスはこれらの意味よりも、より柔軟なイメージの強さです。

堅く強そうな木の枝も折れるときは意外なほどあっさりと折れますが、しなやかな枝はなかなか折れません。また、「しなやか」というのは釣竿のようなものです。釣竿は大きな負荷がかかっても簡単には折れません。しかも負荷がかからなくなれば、通常の形状に戻ってしまいます。

「柔よく剛を制す」という言葉がありますが、頑強性とレジリエンスとの違いを理解する上でちょうどいい表現だといえます。

2.冗長性

冗長性とは簡単にいうと「無駄」のことです。ただ、無駄といってもポジティブな意味のものです。また違った言い方をすると「余分」や「余剰」ともいえます。

ある一定の状態を維持したいシステムに何らかの障害が生じても、システムの機能を持続できるように予め行うバックアップ等の仕組みのことです。

冗長性は何らかの障害が発生したときに有効な仕組みではありますが、平常の状態では効率性を阻害したりする要因になる場合もあります。一方でレジリエンスは冗長性の性質を内包しつつも、平常時には効率性等を阻害することがありません。

3.元の状態への回復

レジリエンスは「回復」「復元」などと訳されることが多いため、元の状態への回復をレジリエンスの条件とみなされることが多くあります。

レジリエンスの概念を詳細に解説した図

しかしレジリエンスは本来、元の状態に回復することだけを意味するものではありません。レジリエンスは目的を達成するためには変化することを厭わない性質があり、状況に応じて柔軟に対応できる力です。

そのためレジリエンスの有無を判断するとき、必ずしも元の状態への回復を意味するわけではないことを考慮する必要があります。

レジリエンスの仕組みとメカニズム

レジリエンスとは望ましくない状態を跳ね返す力

レジリエンスの意味を解説した概念図

レジリエンスは逆境を跳ね返す力です。

例えば個人に対して強いプレッシャーやストレスが襲っても、それを跳ね返す心の柔軟性や強さがあれば困難を克服できるでしょう。しかし、もしプレッシャーやストレスを跳ね返す力、つまりレジリエンスが不足していれば、心が折れてしまうかもしれません。

またチームや組織においても同様です。維持したい状態から逸脱した状況に直面したとき、その状況から迅速に復旧しなければ時間の経過とともに損害が拡大するという状況がまさにレジリエンスを必要とするときです。

レジリエンスは個人においてもチーム等の集団にとっても非常に重要な力なのです。

レジリエンスを鍛える~心理学と教育

折れない心、そして再起する力を鍛える

レジリエンスと反対の性質が「脆弱性」だとしたら、レジリエンスは「反脆弱性」ともいえるかもしれません。

脆弱とは「もろくて弱い」という意味ですから、逆境によって簡単に折れてしまいます。「心が折れる」という言葉で挫折感や心の落ち込みを表現することがあります。しかしレジリエンスがない状態とは落ち込んだりすること自体よりも、むしろ「その状態に留まること」の方がレジリエンスがない状態といえます。

レジリエンスを単なる「強さ」と表現しない理由もここにあります。望ましくない状態に留まらないという部分です。

人は誰でも落ち込むことがあるものです。心が折れてしまうこともあるかもしれません。しかし、レジリエンスがある人というのは、むしろその逆境を糧にして大きく飛躍のチャンスに変えていったりするのです。

つまり、ここで強調しておきたいのは、レジリエンスとは「落ち込まない」「心が折れない」という強さではなく、その状態から再起する力だということです。

それでは次にレジリエンスとは、どのような構造なのかみていきましょう。

レジリエンスを鍛えるために大切な5つの要素

レジリエンスを鍛えるための教育すべき構成要素

自尊感情

自分の存在を肯定的に捉えることができることが大切です。自己肯定感と言ってもいいでしょう。この自尊感情あるいは自己肯定感はレジリエンスのある心にとって基礎となる要素です。

感情の調整(コントロール)

レジリエンスに乏しい場合の特徴として、物事に「一喜一憂」するという側面があります。感情をコントロールすることは、レジリエンスを発揮する上で非常に大切な要素です。

直面する問題に一喜一憂せず、物事を大らかに柔軟に捉えていくことが重要なのです。そのため、感情をコントロールすることは、レジリエンスのある心の条件ともいえるでしょう。

楽観性

人間は自分ではどうにもならないと感じる問題に直面した場合、無力感に襲われることが多くあります。感情をコントロールするだけでは保てない心の葛藤を打破するには、楽観的な思考や感情が大切になります。

例えば直面している問題を一時的な問題と捉えるか、それとも永続的な問題と捉えるかでは全く認識が変わってきます。「きっとこの問題も乗り越えていけるんだ」という楽観的な思考は、問題を一時的なものとして捉えることが可能になり前向きな方向に進んでいけます。

人間関係

人は何かしら関係性の中で生きています。その代表的なものが人間関係でしょう。

自分が直面した問題を他者に話したりすることによって、心が軽くなったり、貴重なアドバイスを受けたりすることってありますよね?

心を前向きにする1つの要素として、人間関係は非常に大切な要素です。

自己効力感

自己効力感とは自分が直面する問題に「自分なら大丈夫」という前向きな認識をすることをいいます。前述した自尊感情と異なる点は、自尊感情が「いま現在の自分」を前向きに捉えることであるなら、自己効力感は「いま現在の自分から未来に対する可能性への前向きさ」ということになります。

たとえ今の自分が直面する問題が大きなものに見えても、自分なら乗り越えていけるという自分への期待ともいえます。

まとめ

レジリエンスは「回復力」「復元力」または「弾力性」と呼ばれ、物理学や生態学から派生した言葉で、近年は心理学や安全工学、リスク管理の分野で注目されている。定義は分野によって異なり、自然災害からの迅速な復旧や個人のストレスへの対処能力など、幅広い側面がある。レジリエンスは非常に柔軟な概念で、固定的な定義がないため、様々な状況や環境に対応できる。

「跳ね返す力」が重要な性質であり、外圧に抵抗するのではなく内から外への強さである。対義語として「脆さ」が挙げられ、これには「靭性」(こわれにくさ)と「延性」(しなやかさ)が存在し、レジリエンスはこれらの性質を包含している。レジリエンスと混同されやすい概念には「頑強性」「冗長性」「元の状態への回復」があり、それぞれ異なる意味を持つ。

レジリエンスは逆境を跳ね返す力であり、個人や組織にとって重要である。心理学と教育を通じてレジリエンスを鍛えるためには、自尊感情、感情の調整、楽観性、人間関係、自己効力感が重要な要素となる。レジリエンスは「反脆弱性」であり、「折れない心」と「再起する力」を備えた柔軟な強さと捉えられる。

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