インシデントレポートの書き方と書式

パソコンをする看護師
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インシデントレポートの書式や様式は病院によって様々あります。インシデントの内容や種類ごとに、レポートを分類していることもあります。また、都立病院のように書式と様式を統一している場合もあります。そのため、基本的には自分が所属する病院の書式や様式に従って、インシデントレポートの作成をしましょう。

ここでは、どんな書式や様式のレポートにも求められる基本的な要素を解説したいと思います。

インシデントレポートの書き方のポイント

インシデントレポートの書き方は6W1Hをベースに

インシデントレポートを作成して提出することの目的は、再発を防止するためにあります。それと同時に、今後に起こる可能性のあるインシデントやアクシデントを未然に防止することにもあります。レポートを作成して報告する意義は「報告そのもの」にあるのではありません。本質的な目的は、その報告によって原因を分析し対策することによって、再発を防止するためにあるのです。

そのため、インシデントレポートの内容は、事実の正確な把握が最も重要な要素になります。

まず、発生した事実を把握すると共に、その前後関係、背景、状況、患者への影響など様々な角度から見つめ直すことが必要です。場合によってはインシデントが発生した現場を保全する必要もありますし、複数の関係者からヒアリングする必要もあるかもしれません。

いずれにしてもインシデントレポートの作成は事実を正確に把握することが大切です。

事実を正確に把握するためには、次の6W1Hの要素が明確に含まれているかが重要なポイントです。

インシデントレポートの書式や書き方に含めるべき要素を解説した図

When(いつ)

Where(どこで)

Who(誰が)

whom(誰に)

Why(なぜ)

What(何を)

How(どのように)

 

【例】

(いつ?)5日の午後16時30分に(どこで?)2病棟の病室内において、(誰が?)看護師Aが(誰に?)患者Bさんに(何を?)輸液300mlの点滴投与をしたときに、(なぜ?) 主任の指示を聞き間違えて(どのように?)本来は24時間で投与するところを12時間で過剰に投与してしまうインシデントが発生した。

 

書式は病院によって違う場合が多いですが、6W1Hに沿って1度文章にしてみるだけで、レポートへの記載がしやすくなります。また、インシデントレポートの作成は自分で何があったのかを振り返ると同時に、しっかりと内容が客観的に理解できなければ意味がありません。報告をするという行為それ自体が、再発を防止するために必要な振り返りにつながるのです。

6W1Hを意識してインシデントを振り返ることによって、インシデントが発生した状況が鮮明にイメージできるようになります。人間は繰り返しイメージをすることで記憶に残りやすくなるため、再発防止のためにも状況を立ち止まって何度も振り返ることが重要です。

そしてレポートの作成にあたって注意したいのは、記憶が鮮明なうちに作成することです。場合によっては現場の状況を保全しておくことも必要です。

インシデントが発生してから時間が経過し、発生した現場の状況が変わってしまってからでは、曖昧な内容の報告しかできなくなる可能性もあるからです。また、複数の人が関与しているインシデントでは、関係者それぞれにヒアリングして、事実を出来る限り正確に捉える必要があります。

大切なのは第三者がレポートをみても事実を理解できるかどうかです。

事実がイマイチつかみきれない場合には、出来事流れ図(業務フロー図)を作成して、時系列に出来事を把握することも有効です。

RCAの文字とハート型のピンクのジグソーパズル

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インシデントの報告体制を理解する

インシデントは適時・適切に報告することが重要です。

そのために、あらかじめインシデントレポートの提出先を決めておく必要があります。インシデントの状況によっては、レポートの作成をするまでもなく緊急に報告しなければならない場合もあるでしょう。迅速な対応が求められる状況においては、インシデントレポートを作成する時間がないからです。

病院によってはインシデントやアクシデントが発生した場合、患者への影響レベルにしたがって、報告先や報告するまでの時間、インシデントレポートの提出先などを取り決めていることもあります。

院内で取り決められたルールにしたがって、適時適切な報告をするようにしましょう。

※患者への影響レベルについてはこちらの記事を参照

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インシデントレポートの書式は現場の状況による

インシデントレポートの書式や様式は、報告された内容によって現場で起きた出来事を把握できるかどうかが重要です。

現場の実態と合わない書式を採用している場合には随時改訂を重ねる必要があります。常に改訂すること、それ自体にも大きな意義があります。なぜなら、管理側は現場の状況を静的に捉えてしまう傾向があるため、現場の動的な実態とのギャップが生まれやすいためです。

書式が現場の状況と合わなければ、再発防止のために分析を行う際、状況把握にとても苦労します。それは書式と現場の状況にギャップがある証拠です。

そのため、管理者側はインシデント報告を正確に把握できるように、レポートの書式あるいは様式を随時改訂する必要があるのです。

また、インシデントレポートを提出する意義は再発防止のためであり、罰則を与えるものではないことを徹底的に周知していく必要があります。

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まとめ

インシデントレポートの書式や様式は、病院によって異なります。各病院は独自の報告体制や書式を採用していることが一般的です。ただし、どの病院でも共通して求められる基本的な要素があります。

1. 6W1Hをベースにする: インシデントレポートは、事実を正確に把握することが最も重要です。そのためには、「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「なぜ」「何を」「どのように」といった6W1Hの要素が明確に含まれていることが重要です。

2. イメージを明確にする: インシデントが発生した状況を鮮明にイメージするために、6W1Hを意識して振り返ることが重要です。事実が鮮明なうちに記述することで、報告書を読む第三者も事態を理解しやすくなります。

3. 報告体制を理解する: インシデントは適時・適切に報告することが重要です。事態によっては緊急に報告が求められる場合もあります。報告体制や提出先は事前に確認し、ルールに従って適切な報告を行いましょう。

4. 書式は現場の実態に合ったものに: インシデントレポートの書式や様式は、現場の実態に即したものでなければなりません。随時改訂し、現場の動的な状況に合わせてアップデートすることが重要です。書式と実態のギャップがあれば、再発防止のための分析が難しくなります。

5. 再発防止を目指す意義を共有する: インシデントレポートの提出が罰則ではなく、再発防止のための学習の機会であることを徹底的に周知しましょう。報告文化の浸透と意識の向上が、医療機関における安全管理の一環となります。

6. 定期的な改訂と教育の実施: インシデントレポートの書式や様式は定期的に改訂し、関係者への適切な教育を実施することが大切です。変化する環境に適応し、報告の品質向上に努めましょう。

インシデントレポートは医療機関において重要な手段であり、再発防止や患者安全の向上に寄与します。従って、正確かつ効果的な報告が求められることを心得ておくべきです。

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