ハインリッヒの法則とは~ヒヤリハットの統計的な経験則

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「1」は「神の領域」である

ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ

ハインリッヒの法則とは何か~その意味と根拠について

ハインリッヒの法則の概要

ハインリッヒの法則とは、米国の損害保険会社で技術調査副部長をしていた安全技術者ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが5000件以上に及ぶ事故事例を根拠にして導き出した統計的な経験則です。その内容は、1つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり、さらにその背景には300のインシデントが存在するというものです。日本では「ヒヤリハットの法則」とも呼ばれています。

ハインリッヒの法則とは何かという意味と概念を解説した図

ハインリッヒが1928年にこの法則を論文で発表してから、およそ1世紀に及ぶ現在まで様々な分野で活用されています。とりわけ労働事故が人間の生命に直結するような分野において活用されており、日々の安全活動に活かされています。また最近では企業のクレーム対応や情報セキュリティ等の管理にも浸透しており、ハインリッヒの法則が様々な分野において応用できる経験則となっています。

ハインリッヒの法則の根拠

ハインリッヒの法則の根拠は、米国の某工場において発生した5000件以上の労働災害を調査した結果に基づいています。「1:29:300」という数字は、その調査で導き出された統計的な結果に基づいており、必ずしも絶対的な数字ではありません。

300件のインシデントが発生したら必ず1件の重大事故が発生するというわけではありませんし、1件の重大事故が発生したら必ず300件のインシデントが存在するとも限りません。

ハインリッヒの法則で重要な点は、もう1世紀近く前に発表された経験則が今なお引用され続けている背景には、時代の変化あるいは技術革新や進化があっても、人間の行動特性は大きく変化していないことを示唆している点です。そのことを踏まえた上で、次にハインリッヒのドミノ理論(モデル)の解説をしていきます。

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ハインリッヒのドミノ理論(モデル)「5つの駒」

以下の図はハインリッヒのドミノ理論に基づくモデルになります。

ハインリッヒの法則の5つの駒を解説した図

ハインリッヒのドミノ理論とは、事故や災害に至るプロセスを原因と結果の連鎖として説明した理論です。

ハインリッヒは事故や災害に至る原因が「人」にあるという仮説に基づいて5つのドミノに例えました。日本においては「ハインリッヒの5つの駒」として知られています。

ドミノ理論の内容は、ドミノに記された数字の順に先行事象として連鎖していき、最終的に事故へと発展して災害に至るとしたものです。ここで事故と災害を区別しているのは、事故を「被害をもたらす事象」と定義し、災害を「被害そのもの」として定義しているためです。その理由は、事故の発生が必ずしも被害をもたらすとは限らず、被害に至る前に食い止められた事故としてインシデント(ヒヤリハット)を含むからです。

このドミノ理論は1つのドミノが倒れることによって、自動的に次のドミノが連鎖的に倒れていき、最終的に災害にまで発展することを系統的に表現したモデルになります。逆にいえば、この連鎖するドミノのうち1つを除去したら、連鎖を食い止めることができるともいえます。

ハインリッヒは、5つのドミノの中で除去すべき1つを「③不安全行動・不安全状態」であると主張しました。その理由は、前述したハインリッヒの法則でいう300のインシデントの背景には、さらに数千から数万の不安全行動や不安全状態が存在するとハインリッヒは主張しているためです。つまり日常的な行動の管理こそが、事故や災害を防止するための最高の手段であると主張しているわけです。

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ハインリッヒの法則の活用~安全の対義語は危険ではなく「不安全」

ハインリッヒの法則は、今やあらゆる業界で様々な形で活用されています。医療や介護分野や航空業界、基幹産業や製造業、IT業界などなど。300:29:1という統計的な数字はともかく、ハインリッヒが最も強く主張しているのは「不安全」に対する警告です。

安全の反対を危険やリスクではなく「不安全」におくことは、安全に関わる手綱を自らが握っていることを意味しています。つまり、日々の不安全行動と状態を自らが主体的に管理することこそが、ハインリッヒが最も訴えたかったことだともいえるのです。

事故や災害は偶発的なものではなく、その背景には多くのインシデントが存在し、さらにその背景には多くの不安全が存在します。それらの要因が、ときには連鎖的に、ときには複合的に重なり合い必然的に1つの重大事故へと繋がっていくわけです。

ハインリッヒの法則を活用する要点を解説した図

しかしハインリッヒの主張で面白いところは、ハインリッヒ自身が「1は神の領域である」という言葉を残しているところです。これだけ統計的に多くの事例を詳細に調査し、偶発性を否定しているにもかかわらず、偶然性を否定しきれずにいるのです。その偶然性をハインリッヒは「神の領域」と表現したわけです。

ハインリッヒの真意は今となってはわかりません。しかし1つ確かなのは、1世紀近く前にハインリッヒが主張したことが今も引用され続けていること。そしてその主張が、人間の行動特性の不変性を裏づける側面があることです。

いずれにせよハインリッヒは、次世代とまたさらに先の世代である我々に対して、安全を脅かすものへの警鐘と不安全に対する教訓を残したといえるのではないでしょうか。

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